2019年05月15日号
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artscapeレビュー

写真の起源 英国

2019年03月01日号

会期:2019/03/05~2019/05/06

東京都写真美術館[東京都]

志賀理江子「ヒューマン・スプリング」展と同時期に開催された「写真の起源 英国」展は、カロタイプや、湿板写真などの古典技法によって撮影・プリントされた小さめの古写真が並ぶ、どちらかといえば地味な印象の展覧会である。だが、それぞれの写真に込められた、世界をこのように見たい、このように定着したいという思いの熱量はただごとではない。志賀理江子展の巨大プリントとはまったく対照的だが、これはこれで写真という表現メディアのひとつの可能性を開示しているのではないだろうか。

フランスとともに、写真発祥の地のひとつであり、19世紀のピクトリアリズム(絵画主義)の流れをリードしたイギリスだが、それ以後は写真表現のメイン・ストリームからは外れてしまった。それでも世界最初の写真技法の発明者であるウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット、サイアノタイプ(青写真)で藻類のフォトグラムを制作し、女性写真家の草分けとなったアンナ・アトキンス、ガラスのネガを使用する湿板写真(湿式コロジオン法)を発明したフレデリック・スコット・アーチャーなど、1830~50年代のイギリス写真の輝きはほかの国を圧倒している。いうまでもなく、それは絶頂期を迎えつつあった大英帝国の威光に支えられたものであり、写真表現と政治・経済の状況との関係も面白いテーマになりそうだ。

展示の最終章にあたる「英国から世界へ」のパートで紹介された、1858年のエルギン伯爵、ジェイムズ・ブルース率いる外交使節団に同行したナソー・ジョンソンが撮影した『外国奉行たち』、エジンバラ出身の御雇外国人、ウィリアム・バートンが開催に協力した「外国写真展覧会」(1893)目録に掲載されたジュリア・マーガレット・キャメロンの《美しき乙女の庭》(1868)など、イギリスと日本との関係もとても興味深い。できれば19世紀だけでなく、それ以後のイギリス写真の展開もぜひフォローしてほしい。

2019/03/04(月)(飯沢耕太郎)

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