2019年05月15日号
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artscapeレビュー

国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ──ピュリスムの時代

2019年03月01日号

会期:2019/02/19~2019/05/19

国立西洋美術館 本館[東京都]

日本で唯一のル・コルビュジエの建築作品である国立西洋美術館で、ル・コルビュジエの展覧会が開催されるとあらば、これほど話題性に富んだ話はない。しかも同館は「ル・コルビュジエの建築作品──近代建築運動への顕著な貢献」の1資産として、2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されたばかりである。いったいどんな展示内容になるのかと思えば、焦点を当てたのは、ル・コルビュジエの“原点”だった。ル・コルビュジエが建築家として本格的に活動を始める前、絵画を通して「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した頃から、代表作「サヴォワ邸」を設計した頃までの10年間に焦点を当てたのである。


1918年末のパリで、ル・コルビュジエは画家のアメデ・オザンファンとともに冊子『キュビスム以後』を発行し、ピュリスムを宣言する。当時、パリの美術界で注目を浴びていたキュビスムを批判し、新しい芸術論を展開するのだが、幾何学を用いて構成する手法はキュビスムとよく似ていて、その違いについて解説されているものの、いまひとつピンとこない……。と思っていたら、最終的にル・コルビュジエはキュビスムを認めて、積極的に紹介する立場へと変わっていくため、やや肩透かしを食らってしまった。それでも平面図と立面図を合体させた独特の構成や、黄金比を用いた計算し尽くされた構成などは、ル・コルビュジエらしく、その後に建築家として開花していく予感をすでにはらんでいた。

個人的には、ル・コルビュジエの絵画にとても好感を持った。正直、ル・コルビュジエが描いた絵画を何作もじっくりと鑑賞したのは初めてのことかもしれない。まさに絵画からル・コルビュジエの思想の変遷を垣間見ることができ、これはこれで大変興味深かった。その多くが静物の抽象画である。瓶やグラス、ランタン、ギター、本などの日用品が抽象化され、それらが規則的に配置され、制御された色と色とが重なり合い、複雑に見えるようで秩序立った世界として描かれている。何と言うか、心地が良いのだ。誤解を恐れずに言えば、アンビエントミュージックならぬ、アンビエントアートのような存在に感じた。空間を構成するように絵画を構成すると、このような世界が生まれるのか。複製画でいいので、叶うなら、わが家のリビングにも掛けたいと思った。


公式サイト:https://www.lecorbusier2019.jp

2019/02/24(杉江あこ)

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