2019年05月15日号
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artscapeレビュー

TPAM2019 ファーミ・ファジール+山下残『GE14』、ファイブ・アーツ・センター『仮構の歴史』、イルワン・アーメット『暴力の星座』

2019年03月01日号

会期:2019/02/16~2019/02/17

Kosha33ほか[神奈川県]

横浜のTPAMは、大学の業務が忙しい2月中旬に開催されるため、毎年なかなか鑑賞できないのだが、今年は最終日のみ、なんとか時間をとることができた。プログラムは、東南アジアのレクチャー・パフォーマンス的な演目を3つだったが、いずれも現代の政治、社会、歴史を扱うかなりヘヴィなテーマである。

ファーミ・ファジール+山下残の『GE14』は、マレーシアで60年変わらなかった与党が変わる歴史的な瞬間に立候補し、勝利したパフォーマーのドキュメント映像にあわせて、弁士が語る後、今度は舞台を路上に移し、本人が演説する。マハティールの野党としての現役復帰にも驚いたが、選挙がもつべき民衆の熱量を羨ましく思う。

同じくマレーシアのファイブ・アーツ・センターによる『仮構の歴史(仮題、ワーク・イン・プログレス)』は、政権交代に伴い、新しい歴史教科書が2020年に発行することを踏まえ、歴史から消されていたマラヤ共産党の非合法活動を掘り起こす試みだった。その過程で激しい批判にさらされたファーミ・レザらが、白か黒かに陥る政権の歴史のあり方を問う。

そしてイルワン・アーメットの『暴力の星座』は、『アクト・オブ・キリング』や『ルック・オブ・サイレンス』のドキュメント映画で知られるようになった9月30日事件後のインドネシアにおける大量虐殺(=共産主義者の排除)が題材である。倉沢愛子がこの事件を経た日本とインドネシアの関係について問題提起した後、アーメットが登場して、いまも続く暴力について考察し、スペクタクル的なエンディングを迎える。

どれをとっても、いまの日本の状況を考えれば、じつはまったくよそ事ではないと思わせるラインナップだ。ただ残念ながら、アートが政治性をもつことは当然という雰囲気が日本にない。それどころか美術でも音楽でも、そうした表現をにじませるだけで「〜に政治を持ち込むな」というふうに炎上が起きている。

2019/02/17(日)(五十嵐太郎)

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