artscapeレビュー
清水裕貴「地の巣へ」
2019年03月01日号
会期:2019/02/19~2019/03/04
ニコンプラザ新宿[東京都]
清水裕貴は2007年に武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業後、コンスタントに写真作品を発表し続けてきた。2011年には「ホワイトサンズ」で第5回写真「1_WALL」のグランプリを受賞、2016年には「熊を殺す」で第18回三木淳賞を受賞した。今回の個展はその三木淳賞の受賞新作展として開催されたものである。
最近は小説も発表している清水の展示は、いつでも言葉と写真とが絡み合い、結びついて展開される。今回の「地の巣へ」でも、最初のパートに「あれ」と称される生きものが登場する、かなり長い詩が掲げられていた。「夜の間に腹から伸びた無数の足が/泥を掻いて川を下りてくる/水路を駆け巡りあなたを探している」と書き出される詩の内容と、写真とのあいだに直接的な関連はない。大小のプリントが壁に直貼りされ、床にも広がってきている写真のほうは、水やシルエットになった人物が繰り返し登場するのだが、これまた詩と同様に謎めいた内容である。ただ、以前の作品と比べると、テキストと映像とのあいだの緊張感を孕んだ関係の構築の仕方に説得力が出てきた。もう一歩先まで進んでいけば、高度な言葉の使い手としての才能と、繊細な感受性を備えた写真家としての能力とが、よりダイナミックに融合してくるのではないだろうか。
今回の展示は、会場のスペースを二人で分割していたために、照明を落とすなどの工夫はあったものの、清水の作品世界を緊密に展開するには問題があった。インスタレーションの能力も高いので、どこか大きな会場での展示を実現したい。なお、本展は3月21日~3月27日に大阪ニコンサロンに巡回する。
2019/02/27(水)(飯沢耕太郎)