2022年10月01日号
次回10月17日更新予定

artscapeレビュー

金沢 国立工芸館「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」ほか

2022年03月15日号

[石川県]

国立工芸館の「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」は、小規模ながら、京都国立近代美術館のコレクションも活用しつつ、海外への影響(エミール・ガレ、ルネ・ラリック、ドーム兄弟など)と日本での受容(当時、ヨーロッパを訪れた浅井忠や神坂雪佳、杉浦非水による広告のモダンなグラフィックなど)、そして自然をモチーフとした現代工芸(松田権六や田口善国など)をコンパクトに紹介していた。カタログは制作されていなかったが、展示を理解するための11の扉を記した無料配布のリーフレットも充実している。ちなみに、以前、パリのギメ東洋美術館の「明治」展で見た日本からの輸出品は、かなり装飾過多であり、西欧のジャポニスムとは少し違う。


「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」ガレとドーム兄弟の作品 国立工芸館



杉浦非水の広告の展示 国立工芸館


向かって右隣の石川県立美術館における常設展示の小特集「日本画のてびき─近代から現代へ─」は、「日本画」とは何かを改めて問う企画だった。そこでフェノロサによる1872年の講演「美術真説」における「Japanese painting」の訳語として「日本画」の言葉が初めて登場したことから、彼が洋画に対する優位性として指摘した5つの特徴(非写実/陰影なし/輪郭/淡白/簡潔)を振り返る。そして下村正一や安嶋雨晶については、それぞれの具象的な過去作との比較を通じて、1950-60年代の抽象化の影響を確認し、作風が大胆に変化したことを示す。日本的な絵画をたどると、英語の訳語や近代絵画の受容が埋め込まれている。

《石川県立歴史博物館》(1986)と《加賀本多博物館》(2015)は、煉瓦造の旧兵器庫3棟(1909、1913、1914)をそれぞれ異なる構法によって、補強しつつリノベーションした実験的なプロジェクトだった。外観はいずれも原形とあまり変わらないが、内部は鉄筋コンクリート造、鉄骨造、そして斜めのバットレス補強という3種類の手法を用いている。歴史博物館の近現代のパートでは、三八豪雪の大変さや、宝塚のスキームをまねて、かつて内灘に存在した粟ヶ崎遊園などを紹介していた。昭和のちゃぶ台はここにもあり、博物館の定番と化している。また明治期に輸出用の工芸を育成した金沢の銅器会社もとりあげたが、これは県美術館の常設展示と重なっており、多面的にその位置づけが確認できるだろう。


石川県立美術館



国立工芸館から《石川県立歴史博物館》の方を見る



《加賀本多博物館》



住宅団地とちゃぶ台の展示 石川県立歴史博物館



銅器会社の展示 石川県立歴史博物館


めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン

会期:2021年12月25日〜2022年3月21日(月)
会場:国立工芸館
(石川県金沢市出羽町3-2)

日本画のてびき─近代から現代へ─

会期:2022年1月27日(木)〜2022年2月20日(日)
会場:石川県立美術館
(石川県金沢市出羽町2-1)

石川県立歴史博物館

(石川県金沢市出羽町3-1)

加賀本多博物館

(石川県金沢市出羽町3-1)

2022/02/15(火)(五十嵐太郎)

artscapeレビュー /relation/e_00059467.json l 10174728

2022年03月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ