2022年10月01日号
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artscapeレビュー

開館40周年記念展 扉は開いているか ─ 美術館とコレクション1982-2022

2022年03月15日号

会期:2022/02/05(土)~2022/05/15(日)

埼玉県立近代美術館[埼玉]

コロナ禍では海外から作品を借りにくい状況が続くこともあって、あらためて美術館が所有するコレクションの価値が注目されていると思うが、埼玉県立近代美術館は開館40周年というタイミングが重なり、館そのものの歩みや活動を紹介する展覧会が開催された。したがって、作品だけでなく、関連する資料も陳列し、同館の歴史、収蔵・企画の経緯や方針(埼玉県立博物館からの移管、瑛九のアーカイブ、小村雪岱の挿画や舞台美術、地域の作家、1970年代というテーマ)、そして設計者である黒川紀章にスポットを当てたものである。例えば、初代館長の本間正義の文章(「展示ということ」の連載など)、田中一光がデザインした開館記念展のポスター、黒川のスケッチやドローイング、美術館の基本設計図、模型、工事記録写真、地質標本、「1970年─物質と知覚 もの派と根源を問う作家たち」の展示プラン図や会場記録写真などからは、美術館の背景を知ることができるだろう。なお、黒川は1980年代にいずれも公園の中に立地するポストモダンの美術館三部作を手がけたが、最初が埼玉であり、その後に《名古屋市美術館》(1988)と《広島市現代美術館》(1989)が続いた。


「扉は開いているか ─ 美術館とコレクション1982-2022」展 瑛九の資料展示



「扉は開いているか ─ 美術館とコレクション1982-2022」展 小村雪岱の舞台装置原画



「扉は開いているか ─ 美術館とコレクション1982-2022」展 ナイジェル・ホールの「サイタマ・ミュージアム・プロジェクト」(エスキース)



「1970年─物質と知覚 もの派と根源を問う作家たち」の会場構成など 埼玉県立近代美術館


埼玉県立近代美術館の特徴としては、インスタレーションを試みた田中米吉や川俣正、コインロッカーに作品を設置した宮島達男など、歴代のアーティストが積極的に建築に介入したことも挙げられるだろう。特に田中の《ドッキング(表面)No.86-1985》(1986)は、建築の格子パターンとそろえることで同化しつつも、ヴォリュームとしては直方体が斜めに貫入し、建築と一体化していた。これらは建築が完成した後のサイトスペシフィックな作品だが、奈義町現代美術館(1994)や金沢21世紀美術館(2004)のコミッションワークに継承されるものとして位置づけられる。ともあれ、埼玉県立近代美術館が地方のミュージアムが果たすべき役割を切り開いていたことがうかがえた。

大宮の住宅地に立ち寄り、今年45歳で急逝した柄沢祐輔の代表作、《s-house》(2013)を外から見学した。フォルマリスティックなデザインと大胆なガラス張りの外観をもつ住宅として話題になったものである。さすがに現在は透明な状態では使われていなかったが、以前、ゼミ合宿で見学を依頼していたが、都合がつかず、ようやく訪れることができた。彼は話していたとき、すごい速度で矢継ぎ早にさまざまなアイデアを出していたことが記憶に残る。もっと多くの建築を実現して欲しかった。

2022/02/17(木)(五十嵐太郎)

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