artscapeレビュー

ドリーム/ランド

2023年03月01日号

会期:2022/12/18~2023/01/28

神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]

昨年12月中旬に始まったのに、展覧会のことを知ったのは今年に入ってから。毎回のことだが、せっかくの企画展だというのに、なんで神奈川県はもっと広報しないのだろう? いつもだだっ広い会場に観客は2、3人しかおらず、ゆったり鑑賞できるのはいいけれど、年に一度あるかないかの現代美術展を企画するんだから、県内外を問わずもっと多くの人に見てもらうべきだろう。出品作家もたくさんの人に見てほしいと願っているはず。謙虚にもほどがある(笑)。

同ギャラリーではこれまで「日常/場違い」「日常/ワケあり」「日常/オフレコ」という「日常」シリーズを開いてきたが、今回から新たに国、土地、場所などを意味する「ランド」を作品化していくシリーズになるそうだ。その第1弾が「ドリーム/ランド」。出品作家は30〜40代の7人だが、刺繍による偽札づくりに励む青山悟も、キッチュな映像インスタレーションを見せる笹岡由梨子も、あまり「ドリーム/ランド」のタイトルとは関係ない。この際タイトルは忘れたほうがいいだろう。

いちばん感心したのは、大ギャラリーの壁や天井に映像を映し出す林勇気の《another world-vanishing point》というインスタレーション。ウェブ上から集めてきた食べ物、乗り物、家具、食器、動物、植物などあらゆるイメージが高密度に、しかも奥行きを伴いながら漆黒のなかを横に流れていく。つまり宇宙空間にさまざまな日用品が浮かんでいるイメージ、あるいは地球崩壊後のスペースデブリ(宇宙ゴミ)を想像すればピッタリかもしれない(想像できないけど)。しばらく見ていると流れが徐々に速くなって線状に流れ、個々のイメージが判別できなくなる。特に壁に向かって斜めに写した映像はものすごいスピードで放射状に流れていく。この宇宙的なスピード感、なにか懐かしいと思ったら、映画『2001年宇宙の旅』で経験したっけ。と思ったら再びスピードが落ち、個々のイメージは瓦解して消えていく。繰り返し見入ってしまった。



林勇気《another world-vanishing point》[筆者撮影]


公式サイト:https://dreamlands.kanagawa-kenminhall.com

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