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カタログ&ブックス | 2023年4月1日号[テーマ:「わからん」ままでも現代アートとの接点を発見できる5冊]

2023年04月01日号

日本を代表する現代美術コレクション「タグチアートコレクション」を集めた展覧会「タグコレ 現代アートはわからんね」(角川武蔵野ミュージアムで2023年5月7日まで開催)。解説や空間構成など、現代美術は苦手という人にもその存在をぐっと身近に感じさせる工夫に満ちた本展の関連書籍と併せ、興味の先に一歩踏み込む5冊を選びました。

※本記事の選書は「hontoブックツリー」でもご覧いただけます。
※紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。
協力:角川武蔵野ミュージアム


今月のテーマ:
「わからん」ままでも現代アートとの接点を発見できる5冊

1冊目:めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード

著者:筧菜奈子(文・絵)
発行:フィルムアート社
発売日:2016年2月18日
サイズ:21cm、159ページ

Point

「もの派」「レディメイド」「アヴァンギャルド」……言葉で読んでも、少し経つとその意味を忘れてしまうという経験は誰にでもあるはず。美術史研究者である著者自身による(!)イラストで現代美術の作家や専門用語をゆるくかつ丁寧に解説してくれる本書は、眺めているだけでその語のもつ背景が頭の中に立ち上がります。


2冊目:みんなの現代アート 大衆に媚を売る方法、あるいはアートがアートであるために

著者:グレイソン・ペリー
翻訳:ミヤギフトシ
発行:フィルムアート社
発売日:2021年8月26日
サイズ:19cm、182ページ

Point

「タグコレ展」の最終セクションのタイトル「作品はみんなのもの」とも共鳴する本書。ターナー賞の受賞作家でもあるグレイソン・ペリーがユーモアを交えながら語るアート・ワールドの姿はどこか愛らしく滑稽でもあり、「良い」とされている作品の評価軸の裏側にあるさまざまな文脈に目を向けるきっかけを与えてくれます。


3冊目:絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで 増補普及版

著者:デイヴィッド・ホックニー、マーティン・ゲイフォード
翻訳:木下哲夫
発行:青幻舎インターナショナル
発売日:2020年11月21日
サイズ:24cm、368ページ

Point

コレクションの初期は平面作品が中心だったというタグコレ。巨匠ホックニーと美術批評家マーティン・ゲイフォードとの対談形式で進む本書は、図版も豊富に参照しながら写真やデジタル画像、映像との対比で名作絵画を紐解いていくうちに、絵画という表現の独自性が浮き彫りに。現代の視点に立った、絵画史入門に最適な一冊。



4冊目:カリコリせんとや生まれけむ

著者:会田誠
発行:幻冬舎
発売日:2012年10月4日
サイズ:16cm、270ページ

Point

現代日本を代表する作家のひとり、会田誠によるエッセイ集。「タグコレ」展でも印象的に展示されている《灰色の山》からも感じられるように、いまの日本で生きる肌感覚や表象・イメージを作品にし、ときに物議を醸してきた会田。育児や料理といった日常から彼の思考回路が垣間見える本書は、肩の力の抜けた筆致も魅力的。



5冊目:ポストコロナと現代アート 16組のアーティストが提起するビジョン

編集:ポストコロナ・アーツ基金
発行:左右社
発売日:2022年7月20日
サイズ:21cm、183ページ

Point

そしていま。時代の動きと作品が切っても切り離せない現代美術は、2020年以降の「ポストコロナ」の現在において、どう変化しているのでしょうか。日本国内の若手〜中堅アーティスト16組それぞれのアプローチからの近作を参照しながら、コロナ禍が現代にもたらしたものが浮かび上がってくる同時代の一冊。







タグコレ 現代アートはわからんね


会期:2023年2月4日(土)〜5月7日(日)
会場:角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3)
公式サイト:https://kadcul.com/tagukore

2023/04/03(月)(artscape編集部)

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