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薛穎琦(セツ・ヒンキ)「光の彼岸」

2023年07月15日号

会期:2023/06/06~2023/06/24

IG Photo Gallery[東京都]

薛穎琦(セツ・ヒンキ)は台湾・台中市生まれの写真家。2020年に東京綜合写真専門学校を卒業し、台湾に戻って写真家として活動するようになった。今回の展示は2021年に刊行した写真集『熠燿宵行』(東京綜合写真専門学校出版局)の続編というべきもので、台湾、および日本各地の「火まつり」を題材としている。

前作では、台南市で元宵節(旧暦1月14、15日)に行なわれる「塩水蜂(爆竹祭り)」に絞って撮影していたのだが、本シリーズでは被写体の幅が大きく広がったことで、「その光の向こう、三途の川の彼岸に、一体どんな光景があるのだろう」と問いかける彼の狙いが、よりくっきりと浮かび上がってきた。たしかに、光と音と熱を発して眩く輝き、やがては消えていく「火」は、此岸と彼岸とを結びつける象徴的な存在といえるだろう。薛は、祭礼の場における「火」のあり方を追い続けることで、日常から非日常の世界へと移行しつつある状況を丁寧に写しとろうとしている。プリントのクオリティに、まだ物足りないところはあるが、その意図は少しずつ形になりかけているように思える。

会場には、展覧会に合わせて刊行したという、同名の手作り写真集も置かれていた。そのなかに含まれていた人の群れを撮影した写真の数が、展示では少なくなっているのが少し気になった。いい作品なので、ぜひ、もう一回りスケールの大きなシリーズとして完成させていってほしい。


公式サイト:https://www.igpg.jp/exhibition/YingChiHsueh23.html

2023/06/07(水)(飯沢耕太郎)

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