2024年02月15日号
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artscapeレビュー

本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語

2023年07月15日号

会期:2023/06/16~2023/09/24

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

本橋成一とロベール・ドアノーの二人展が開催されると聞いたときには、どちらかと言えば危惧感のほうが大きかった。1940年、東京・東中野生まれの本橋と、1912年、パリ郊外・ジャンティイ生まれのドアノーでは、世代も育ってきた環境も時代背景もまったく違っていて、二人の写真がどんな風に融合するのか想像がつかなかったのだ。

ところが、本展を見るなかで、その作品世界の「交差」が意外なほどにうまく成立していることに驚かされた。本展の出品作は「第1章 原点」「第2章 劇場と幕間」「第3章 街・劇場・広場」「第4章 人々の物語」「第5章 新たな物語へ」の5部構成になっている。それらを見ると、例えば炭坑夫(第1章)、サーカス(第2章)、市場(第3章)、家族(第4章)など、二人の写真家に共通するモチーフが、たびたび現われてくることに気がつく。第5章だけが、やや異なる世界を志向しているように見えるが、本橋とドアノーの被写体の選択の幅がかなり重なり合っていることがよくわかった。

だが、何よりも「交差」を強く感じるのは、ドアノーの孫にあたるクレモンティーヌ・ドルディルが本展のカタログに寄稿したエッセイ(「それでも人生は続く」)で指摘するように、「二人に共通しているのは、人々の仕事の現場と道具の中とにともに身を置いて撮影している」ということだろう。そのような、被写体に寄り添い、いわば彼らと「ともに」シャッターを切るような姿勢こそ、本橋とドアノーの写真が時代と場所を超えた共感を呼び寄せるゆえんなのではないだろうか。

このような、二人の写真家同士の思いがけない組み合わせを求めていくことは、東京都写真美術館の今後の展示活動の、ひとつの方向性を示唆しているようにも思える。本橋とドアノーのようなカップリングは、もっとほかにもありそうだ。


公式サイト:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4534.html

2023/06/25(日)(飯沢耕太郎)

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