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鈴木マサルの展覧会2023 テキスタイルの表と裏 Looking through the overlays

2023年07月15日号

会期:2023/07/01~2023/07/22

Karimoku Commons Tokyo[東京都]

テキスタイルデザイナーの鈴木マサルは、テキスタイルの新たな可能性をつねに探究し続けている人なのだろう。これまでにも自身のファブリックブランドを中心に、傘をはじめ、タオルやバッグ、ソックスなど、衣服以外の分野でテキスタイルそのものの魅力を発信し、多くのファンを獲得してきた。例えば傘の形や機能が優れているからというより、テキスタイルの色や柄が素敵だからという購買動機をファンに抱かせるのだ。本展で鈴木がさらに挑戦したのは、空間へのアプローチである。これまでにも広い面積のテキスタイルを大胆に使った展覧会を催してきたように思うのだが、「純粋にテキスタイル自体を主役にした展覧会を行っていなかった」とのことで、今回、彼が着目したのが「テキスタイルの表と裏」である。


展示風景 Karimoku Commons Tokyo[Photo: Masaaki Inoue, Bouillon]
会場構成:芦沢啓治 展覧会コーディネート:藤本美沙子


テキスタイルには表側と裏側があるという特性ゆえに、空間に設置する際には壁や窓を背にして裏側を隠すようにしてきたことを指摘。衣服も裏側を内にして仕立てて着る。もちろん両面使いが可能な凝った織物や、仕立て方次第ではリバーシブルの衣服もあるが、通常、平坦な織物や染物には表と裏が存在する。鈴木が挑んだのは、空間の中でテキスタイルを自立したプロダクトとして存在させるため、その表と裏の概念をなくすことだった。そこでシャトル織機で織り上げたオリジナル生地の両面に、4版で構成した抽象模様を表2版、裏2版に分けて手捺染で染めるというユニークな手法を採用。つまりどちらの面にも表と裏が存在するプリントテキスタイルを制作したのだ。表の方は鮮やかな色ベタだが、裏の方はかすれた色合いに映る、独特の対比と重なりを生かしたデザインとした。そんな実験的なプリントテキスタイルが展示空間に大胆かつ優雅に波打ちながら垂れ下がり、テキスタイルそのものの魅力をまた突き付けられてしまった。


展示風景 Karimoku Commons Tokyo[Photo: Masaaki Inoue, Bouillon]
会場構成:芦沢啓治 展覧会コーディネート:藤本美沙子


さらにこのプリントテキスタイルをパーテーションや建具に使うなど、具体的なプロダクトへの展開も見せていた。確かにパーテーションであれば、表と裏の区別なく使えることが求められる。面をテキスタイル1枚で構成できれば、非常に軽やかなものになるだろう。これまでプロダクトや家具におけるテキスタイルは、張地やカバーでしかなかった。そうではない主役級プロダクトを見据えた挑戦を今後も続けていくのだとしたら、楽しみである。


公式サイト:https://commons.karimoku.com/news/detail/230626/


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