artscapeレビュー

第二回 国際海洋環境デザイン会議/エキシビション「OCEAN BLINDNESS─私たちは海を知らない─」

2023年10月15日号

会期:2023/09/29~2023/10/09

アクシスギャラリー[東京都]

地球環境を考える際、山や森林といった緑へ想いを馳せることは多いが、地球の表面積の7割を占める海に対して、私たちはどこか無頓着でいることが多い。本展は、海洋教育の実践的なプログラムを開発・実施・提供するプラットフォーム、みなとラボ(3710Lab)が日本財団と共同開催する第二回 国際海洋環境デザイン会議およびエキシビションである。「私たちは海を知らない」というタイトルは、まったくそのとおりだと感じる。地球温暖化による海面上昇や海洋プラスチック問題などは、最近よく耳にするが、実際のところそうした問題も表面的にしか捉えきれていないし、そもそも生命の源である海の潜在能力や魅力についてもよくわかっていない。そんな初歩的なレベルまで目線をぐっと下げて展示に取り組んでいた点で、本展には共感を持てた。多くの人々に気づきを与えることを目的としていたなら成功なのだろう。が、あくまで気づきに留まっており、欲を言うなら、あともう一歩踏み込んだ展示内容であればさらに学びを得られたのではないかとも思う。


展示風景 アクシスギャラリー[Photo: Masaaki Inoue]


本展然り、みなとラボの活動がデザインの視点を取り入れ、第一線で活躍する何人ものデザイナーを巻き込んでいる点には可能性を感じた。例えば本展の会場構成はwe+で、展示作品にはデザイナーの深澤直人による「海洋環境デザインワークショップ」で生み出された成果物が並んでいた。同ワークショップは第一回が「海を表すもの(イメージ)」、第二回が「見た人が海に触れることができるものをつくり、経過を発表する」という内容で、かつて深澤が実施していたデザインワークショップ「WITHOUT THOUGHT」を想起させ、参加デザイナーが海への考察を深めるという点ではよかったのだろう。しかし成果物としての「海」のデザインはあくまでワークショップレベルに過ぎなかったため、ここからの発展に期待を寄せたいと思う。


展示風景 アクシスギャラリー[Photo: Masaaki Inoue]


展示風景 アクシスギャラリー[Photo: Masaaki Inoue]


ほかにパネル展示ではあったが、海洋生物研究センターとしても機能する海中レストランや、気候変動に影響されない持続可能な世界初の水上コミュニティータウンなど、世界の建築事例については大変興味深く閲覧した。一方で強烈なインパクトを残したのは、会場中にずっと響き渡っていた人間の声による波の音である。これはドットアーキテクツ+コンタクト・ゴンゾによるワークショップで実施された「海を想像して波をつくる」体験の成果のようで、「ざぶ〜ん」といった声音が、いまも頭から離れられないのである。


第二回 国際海洋環境デザイン会議「OCEAN BLINDNESS─私たちは海を知らない─」:https://3710lab.com/news/6157/

2023/10/03(火)(杉江あこ)

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