artscapeレビュー
ERIC「東京超深度掘削坑」
2023年10月15日号
会期:2023/09/12~2023/09/25
ニコンサロン[東京都]
1976年に香港で生まれ、1997年に来日して以来、東京で写真家として活動してきたERICは、7年前に生活の拠点を岡山に移した。その結果、農業や狩猟など、それまでは縁遠かった経験を積み重ねることになる。その「お金を介さない、本来的な食糧調達」のあり方に触れることで、彼のなかに「新たな目」が育ってきたのだという。その彼の新作では、そうやって獲得した視線のあり方を、コロナ禍以降の東京に向けている。
日中シンクロの手法を多用した路上のスナップショットという点においては、これまでの彼の写真のスタイルをそのまま踏襲しているように見えなくもない。だが、都市の表層を鋭利な刃物で剥ぎとるようなこれまでの写真と比べると、本作では視線の深度が深まっているように感じる。マスク姿が目立つ異形の人物たちや、むしろ人間以上の生命力を感じさせる植物たちの写真から見えてくるのは、むしろ都市の深層に伸び広がる「根」のようなものを探り当てようとする試みである。これまでのERICの作品と比較しても、本シリーズには、この時代のこの瞬間を写真に刻みつけておかなければならないという切迫感をより強く感じた。
この「超深度掘削坑」の試みは、もしかすると東京以外でも試みることができるかもしれない。次の展開が大いに期待できそうだ。
ERIC「東京超深度掘削坑」:https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2023/20230912_ns.html
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