artscapeレビュー
フリーダ・カーロ博物館、メキシコ国立自治大学、ポリフォルム・シケイロス
2024年02月01日号
[メキシコ、メキシコシティ]
Uberでシティ南部の閑静な住宅街コヨアカン地区にあるフリーダ・カーロ博物館へ。ここはフリーダの生家を彼女の死後ディエゴ・リベラが博物館に改装し一般公開したもの。予約時間より早めに着くとすでに列ができていた。驚くのは、外壁が目にも鮮やかなコバルトブルーに塗られていること。そして、一辺が50メートルはありそうなほど敷地が広いことだ。
入館すると、おそらくほかの邸宅も同じだろうけど、中庭を囲むように建物が建っている。館内には部屋ごとに彼女が使っていた生活用品や画材、絵画、写真などが展示されている。イーゼルの前に車椅子が置かれていたり、コルセットに絵が描かれていたり、ベッドに横たわりながら絵を描く姿が写真に収められていたり、裕福ながらも不自由な生活を送っていたことがうかがえる。このあとフリーダの作品をたくさん所有しているドローレス・オルメド・パトリョ美術館へ行こうとしたら、アメリカへの巡回展にコレクションを貸し出しているため休館中だという。
そこで、Uberを飛ばして壁画がたくさん残されているメキシコ国立自治大学へ。大学構内の図書館が壁画に覆われていると聞いていたのだが、着いた国立図書館には壁画はなく、数キロ先の中央図書館と間違えていた。しかし道を聞いても英語がほとんど通じないし、クリスマス休暇に入っているのであちこち門は閉まっているしでなかなかたどり着けず、かーちゃんに叱られる。やっとたどり着いた中央図書館は、直方体の建物の4面全体がメキシコの文化と歴史を描いたモザイクに覆われていた。作者はフアン・オゴルマンで、ホセ・クレメンテ・オロスコ、ディエゴ・リベラ、ダビッド・アルファロ・シケイロスの3巨匠に次ぐ第2世代の壁画家だ。壁面全体に描いたせいか、図像は3巨匠のようなリアリズム表現ではなく、対称性が強く様式化され、装飾性の高い壁画になっている。
その奥の校舎の壁面にもモザイク壁画があるが(作者不明)、こちらはシケイロス風のリアリズム表現だ。また別の棟には、壁面をレリーフ上に盛り上げた上に描いたシケイロスの大作があるはずなのだが、残念ながら修復中で幕に覆われていて、反対側の腕の部分しか見られなかった。通りを挟んだ大学の向かい側にあるオリンピック・スタジアムの正面には、鷲や聖火をもつ競技者のレリーフにモザイクを施したリベラの作品があるが、門が閉じられていたので近寄ることができなかった。帰りに、放射状の建物の外壁全面を壁画で覆ったポリフォルム・シケイロスを見に行ったが、こちらも工事中のため仮囲いに阻まれて一部しか見られなかった。壁画運動が始まってから約100年、多くの壁画は老朽化して修復を余儀なくされているようだ。
フリーダ・カーロ博物館(Museo Frida Kahlo):https://www.museofridakahlo.org.mx/
メキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autónoma de México):https://www.unam.mx/
ポリフォルム・シケイロス(Polyforum Siqueiros):https://mexicocity.cdmx.gob.mx/venues/polyforum-cultural-siqueiros/
2023/12/21(木)(村田真)