2024年02月15日号
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artscapeレビュー

ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)

2024年02月01日号

[アメリカ合衆国、ロサンゼルス]

新年をメキシコシティの独立記念塔の前で何万もの人たちとともに迎え、元日にLAに移動。LAへはクリスト&ジャンヌ・クロードによる「アンブレラ・プロジェクト」を見に行った1991年の秋以来だから、実に32年ぶり2度目になる。あのときは「アンブレラ」の取材がメインだったし、そっちの印象が強かったせいか、美術館もいくつか回ったけどあまり記憶に残っていない。

LACMAにはそのときも行ったはずだがほとんど覚えてない。たぶん建物も建て替えたり増築したりしたのだろう。本館のほか、日本館は昨年亡くなったエツコ&ジョー・プライスのコレクションを中心とする展示で(現在休館中)、これは以前からあったような。同じLACMA内のブロード現代美術館(Broad Contemporary Art Museum: BCAM)はダウンタウンにある現代美術館の「ザ・ブロード」と混同しそうだが、こちらはLACMAの現代美術コレクションを収める新館建設にブロード夫妻が資金を提供し、2008年に開館したもの。湾曲した分厚い鉄板を巨大な展示室いっぱいに立てたリチャード・セラの彫刻を始め、メガロマニアックなアメリカ現代美術が並ぶ。さらに隣接地にはデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーも建設中で、2024年に完成するという。この勢い! このスケール! しかもカウンティ(郡立)美術館といいながら個人名を冠した分館を増やすとは、さすがアメリカ。



建設中のデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリー [筆者撮影]


中央の本館では「スルタンのいるダイニング:祝宴の芸術」「織られた歴史たち:テキスタイルと近代の抽象」「永遠のメディウム:石に世界を見る」など、現代美術に限らず古典ものからイスラムものまで幅広く企画展をやっている。特におもしろかったのが、17世紀オランダの絵画と博物学を紹介する「驚くべき世界:オランダ人コレクターのキャビネットと所有の政治学」と、第1次世界大戦時のポスターや映像を集めた「前線を想像せよ:世界大戦争とグローバルメディア」。こんなところでヴンダーカンマーや戦争プロパガンダのポスターが見られるとは。



LACMA「前線を想像せよ:大戦争とグローバルメディア」展 [筆者撮影]


屋外にも作品がある。まず入り口に配されているのがクリス・バーデンの《街灯》(2008)。文字どおり古いタイプの街灯が200本ほど林立している。これは昼間に見ても作者の意図は伝わらない。その後たまたま夜にバスで前を通ったら明かりがついて、実に妖しくも荘厳な雰囲気を醸し出していた。その反対側の美術館の奥にあるのがマイケル・ハイザーの《浮いた塊》(2012)。中央が窪んだ全長140メートルの道をつくり、その上に340トンの巨岩を乗せて下をくぐり抜けるという作品だ。ハイザーは壮大なアースワークで知られたアーティストで、かつて荒野に一直線に切れ込みを入れたような作品をつくっていたが、これはそうしたアースワークのパブリックアートへの応用と捉えるべきか。巨岩を支えるための留め具がついているのが、アースワークではなくパブリックアートであることの証だ。これらに比べれば、ブロード現代美術館前に置かれた奈良美智の彫刻はとても控えめに映る。



マイケル・ハイザー《浮いた塊》[筆者撮影]


ロサンゼルス・カウンティ美術館(Los Angeles County Museum of Art: LACMA):https://www.lacma.org/Broad Contemporary Art Museum
ブロード現代美術館(Broad Contemporary Art Museum: BCAM):https://broadfoundation.org/grantees/broad-contemporary-art-museum-lacma/

The World Made Wondrous: The Dutch Collector’s Cabinet and the Politics of Possession(驚くべき世界:オランダ人コレクターのキャビネットと所有の政治学)

会期:2023年9月17日(日)~2024年3月3日(日)
会場:ロサンゼルス・カウンティ美術館
(5905 Wilshire Blvd., Los Angeles, CA 90036)

Imagined Fronts: The Great War and Global Media(前線を想像せよ:世界大戦争とグローバルメディア)

会期:2023年12月3日(日)~2024年7月7日(日)
会場:ロサンゼルス・カウンティ美術館

2024/01/02(火)(村田真)

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