artscapeレビュー
喜びの海
2009年04月01日号
会期:2009/03/07~2009/03/08
アサヒ・アートスクエア[東京都]
華道家の上野雄次とダンサーの関さなえによる公演の二日目。会場の中央に高々と組み上げられた鉄パイプのタワーに上野がよじ登り、上から順に解体してき、そのタワーの麓に置かれた黒いマットの上で関が寝たまま踊り続けるという構成。花生けとダンスのコラボレーションでありながら、両者がいずれも花生けとダンスの規範に徹底的に背き続ける潔さが、心地よい。なにしろ上野は花を生けるどころか、工事現場の解体業者よろしく、組み外した鉄パイプを次から次へと床に放り投げ、その金属の激突音が空間を切り裂くなか、ダンスの基本的な所作である「立つ」ことの美しさを放棄したかのように、関が水平的な動きを繰り返しているのだから。これはいったい何なのか。暴力的な恐怖と分類しがたい認識的な混乱を味わっていると、いつのまにか天井に移動した上野が横たわる関に向って赤いバラを落とし、しばらくすると、今度は大量の腐葉土を投入。特殊部隊のようにロープで降りてきた上野が透明なラッピングテープで土に埋まった関の身体をマットごと包み込んだところで、緊張の舞台は終了した。
2009/03/08(日)(福住廉)