artscapeレビュー
椿昇2004-2009:GOLD/WHITE/BLACK
2009年04月01日号
会期:2009/02/17~2009/03/29
京都国立近代美術館[京都府]
美術家・椿昇の個展。会場に一歩足を踏み入れると、キャプションも解説も一切設けない、椿の「オレ様ワールド」が全開になっていて、ちょっとひく。「鑑賞前に通読されることをお奨めします」となにやら忠告めいた断り書きがつけられたパンフレットのテキストも、いかにも現代思想にガツンと打ちのめされた大学院生が書いたような理屈っぽい文章で、暗い展示室内では最後まで通読することもままならない。結果として、印象に残ったのは牛の首を切断する映像作品だけで、これも血の海のなかで死んでゆく牛の眼球を執拗にクローズアップでとらえているせいか、安手のヒューマニズムを喚起することはあっても、これではたして「ラディカル・ダイアローグ」が可能となるのかどうか、疑わしい。美術館のロビーに設置されたロケットのような巨大な風船模型も、いまや伝説と化している横浜のホテルにはりついたバッタには到底およばない代物で、せめて海風にあおられるバッタほどの滑稽な勇姿を見せてもらいたかったものだ。
2009/03/20(金)(福住廉)