artscapeレビュー

長谷川等伯

2010年04月01日号

会期:2010/02/23~2010/03/22

東京国立博物館 平成館[東京都]

国宝《松林図屏風》をはじめ、《楓図壁貼付》《枯木猿猴図》《波濤図》など、等伯の代表作78点を公開した展覧会。信春時代の仏画から千利休や武田信玄などの肖像画、壮大なスケール感を誇る金碧画、細かくキャラクターを描き分けた涅槃図にいたるまで、等伯の幅広い筆使いを堪能できた。ライティングの妙が冴え渡った《松林図屏風》はもちろん、とりわけ目を惹いたのは《柳橋水車図屏風》。川に架けられた橋の両岸に春と夏の柳をそれぞれ描き分けた六曲一双の大作で、夏の柳は流れるような細線で描かれているものの、画面の大半は春の芽吹きで占められており、やわらかい新芽の肌を逆撫でするような触感がたまらない。生命が躍動しはじめる春のエロスを感じさせる絵だ。

2010/02/22(月)(福住廉)

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