artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
山口聡一個展 “The patterns”
会期:2017/02/04~2017/03/01
セゾンアートギャラリー[東京都]
シマウマやディズニー風キャラクターのおもちゃがたくさん絡み合っているかのような画像。コンピュータで加工して出力した3DCGかと思ったら、ちゃんと手で描いている。仕上がりは見事。見ていて楽しいけど、描いてて楽しいんだろうか。
2017/02/17(金)(村田真)
門田光雅 “ULTRA”
会期:2017/02/18~2017/03/26
セゾンアートギャラリー[東京都]
200号から小品まで、通路もカフェも含めて20点ほどの展示。相変わらず画材屋が喜びそうなほど絵具をどっさり使った絵画だが、まったく非定型な絵具との格闘跡から、縦または横方向に絵具を伸ばしたストライプ型、垂直・水平のストライプを入れた比較的抑制的な表現まで、いくつかパターンに分かれてきた。いずれにせよこれは描いてて楽しそうだ。
2017/02/17(金)(村田真)
羽場文彦展「冷たい空間」
会期:2017/02/06~2017/02/19
トキ・アートスペース[東京都]
ギャラリー内に一辺1メートルほどの正方形の箱が6個、バラバラに置かれている。箱にはバッタの写真と線描画を焼きつけたタイルが全面に貼られ、離れてみると青いアラベスクのようだ。金沢の陶芸出身で虫好きの作品。
2017/02/17(金)(村田真)
竹内公太 「写真は石碑を石にする、それでも人は」
会期:2017/02/03~2017/03/04
SNOW Contemporary[東京都]
ギャラリー内の壁全面に2枚1組の画像が100組以上貼られている。画像は石碑を撮ったもので、1枚は1976年に出た斎藤伊知郎の『近代いわき経済史考』という本の図版からスキャンしたもの、もう1枚は、その石碑を実際に訪れた竹内が図版と同じ構図で撮影した写真(人が写ってる場合は竹内自身が同じポーズで写り込む)。彼にとっての関心事は記憶や記録にあるようで、石碑はたまたまいわき市の図書館で見つけたものだから、別に「いわき市の石碑」である必要はなかったのかもしれない。余談だが、石碑(モニュメント)も記憶(メモリー)も語源は記憶の女神ムネモシュネーに由来し、その娘たちがミュージアムの語源となるムーサイだから、全部つながっているのだ。ところで1976年というと、ぼくにとっては「わりと最近」だが、この図版を見るとぼくの記憶よりはるかに古く感じる。並んだ2枚を見比べても新旧は歴然としている。当時はデジカメもパソコンもなく、CGもスキャンもなく、もちろんインターネットやSNSなど考えられもせず、情報量はいまの数百分の1、いや数千分の1程度だったんじゃないか。そう考えるとたった40年前が石器時代にも思えてくる。変わらないのは石碑だけだから「石碑時代」というべきか。
2017/02/17(金)(村田真)
Unknown Sculpture series No.7 ♯3 大西伸明「かけがえのないかけかえ」
会期:2017/01/29~2017/02/13
ギャラリー21yo-j[東京都]
たわんだブルーシート、天井から吊り下がった錘、錆びついた鉄のポールなど、つまらないものが2点ずつ並んでいる。ん? 2点ずつ? しかも2点ともシワもサビもキズもまったく同じ。もちろんホンモノ(オリジナル)が2つあるわけないし、ホンモノとニセモノ(コピー)でもない。どちらもニセモノ、というと聞こえが悪いので、ホンモノから型どりしてFRPで固め、着色したレプリカなのだ。2点ずつあるのはおそらく、1点だけだと「つまらないホンモノ」があるだけだと思われて、スルーされてしまうからだろう。でもシワやキズまでまったく同じブルーシートが2点もあれば「おや?」となるはず。これはやはり版画出身のアーティストならではの発想かもしれない。それにしても見事な仕上げ。
2017/02/13(月)(村田真)