artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
石田尚志 映像インスタレーション
会期:2017/01/20~2017/01/30
地下鉄千代田線乃木坂駅から国立新美術館への通路[東京都]
先日来たとき見逃したので、あらためて見に行く。地下の通路の壁と天井に映像インスタレーションしているのだが、なぜ石田尚志の作品が選ばれたのか、見てみて納得した。石田は絵を描く過程をコマ撮りしてアニメのように見せる映像で知られるが、エスカレータの天井にこれを映すと、絵を描き進むスピードとエスカレータのスピードが同調し、映像を身体で体感できるのだ。なるほど、よく考えられている。
2017/01/30(月)(村田真)
第65回東京藝術大学 卒業・修了作品展
会期:2017/01/26~2017/01/31
東京都美術館+東京藝術大学大学美術館+大学構内[東京都]
ヒマだったもんで見に行った。見る側のモチベーションが低かったせいか、ロクな作品に出会わない。まず都美の先端芸術表現科。全学科とも原則的に都美が学部の卒展で、芸大会場は修了展と分かれている。先端はメディアが多彩なだけに、思考がこなれてない作品は学芸会の出し物みたいに稚拙さが目立ってしまう。ビデや温水洗浄機、洗濯機などの家電の効果をpH反応液やメタモカラー、感圧紙などを使って紙に可視化した石橋遙の作品は、見た目は地味だが、改良の余地はたくさんあるけれど、やりたいことは明解だ。油画はいつになく低調な印象。楊博のペインティング《Hey, Mr. Iggy Pop》は描かれた内容もさることながら、天井に届きそうなリッパな正方形の木枠にキャンバス布を張った支持体に注目。彫刻科は、ほかの科より流行の傾向がわかりやすい。ネコ、シカ、ライオンといった動物彫刻、小型のフィギュア彫刻が最近の傾向か。おもしろいのは、人体かなにかを布で覆ったような梱包彫刻。実際に布で覆うのではなく、覆ったように木や石を彫るのだ。これはひょっとして受験時のデッサンの名残か? 藝大の美術館は佐々木敬介の《フアク》1点に尽きる。日本画の修士だが、キャンバスにスプレーで中指を突き立てた絵をグラフィティ調に描いている。フアク……感動した。勝手に村田真賞だ。絵画棟は不作で、箱の上面や本棚の前面に布を張ってペインティングした三瓶玲奈と、藝大美術館の屋上や隙間に展示スペースを増設するプランを提出した佐藤熊弥が目を引いたくらい。ああ疲れた。
2017/01/27(金)(村田真)
2次元×3次元 秋山祐徳太子・池田龍雄・田中信太郎・吉野辰海による平面と立体の新作展
会期:2017/01/23~2017/02/04
ギャラリー58[東京都]
平均年齢80歳を超える4人の「歩く戦後美術史」によるグループ展。歩くといってもギャラリーはよりによってエレベータのないビルの4階にあるから、会場に行くだけでも大変だ。秋山は相変わらずのブリキ彫刻とレリーフ、田中も相変わらずユーモラスなミニマルドローイング、池田も相変わらず、ホントに相変わらず丁寧なアクリル画を出している。吉野は相変わって、頭にトウガラシの突き刺さった犬の彫刻のほか、犬の目、耳、口、鼻、足の肉球をドアップで描いたドローイングを出品。これは5感を表わすという。新境地か。
2017/01/25(水)(村田真)
寺崎百合子 図書館
会期:2017/01/21~2017/02/24
ギャラリー小柳[東京都]
図書館を描いた鉛筆画が6点。薄暗いなかに古びた本たちがかすかに浮かび上がる。本だけでなく地球儀も描いている。が、よく見たら天球儀(月球儀も?)だった。天球儀も丸い本(宇宙誌)だからね。これはほしくなる。入口付近に箱が置かれていてなにかと思ったら、数十本、いや数百本のちびた鉛筆が上向きにぎっしり詰められていた。これも売ってるのだろうか。
2017/01/25(水)(村田真)
太田三郎「Print works」
会期:2017/01/12~2017/01/31
ギャラリーなつか&Cross View Arts[東京都]
壁に5段の棚をとりつけ、その上にさまざまな色紙を並べている。その数200種類。一見ランダムに並んでいるように見えるが、色名(英語名)をアルファベット順に配置したものであることがわかる。例えばAsh greyとかBurnt umberとかCerulean blueといったように。ずっと見ていくと、色名の頭文字にならないアルファベットもあった。QとXだ。さらにそれらの色を使ってアルファベットの色名を表わしたりもしている。例えば「RED」の3文字を、それぞれRose pinkとEmerald greenとDelft blueで塗ることで、赤くないREDを成立させるとか。色彩と記号のあいだを往還させているわけだ。
2017/01/25(水)(村田真)