artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

THE 女流展 vol.4 2017

会期:2017/03/01~2017/03/07

日本橋三越本館6階 美術特選画廊[東京都]

10人くらい出品していたが、ほとんどがどこかの団体に属しているなか、インディペンデントな画家は福田美蘭ひとり。尖閣諸島を巡る2点の絵画を出品している。ひとつは龍安寺の石庭の石を尖閣の島に見立てたもの、もうひとつは水墨画と琳派を混ぜたような作品。「THE・女流展」というタイトルからして時代錯誤的な、そして彼女にとってはいささか場違いとも思える展覧会に臆せず(たぶん)出し続ける。福田美蘭は相変わらず戦ってるなあ。

2017/03/03(金)(村田真)

DAN FLAVIN

会期:2017/02/01~2017/09/03

エスパス ルイ・ヴィトン 東京[東京都]

ダン・フレイヴィンの作品をこういう場所で見られるなんて想像もしなかったな。フレイヴィンは60年代から蛍光灯を使ったシンプルな作品で知られるミニマリズムのアーティスト。作品は、長さの異なる7、8本の白色蛍光灯を左右対称に並べた《V・タトリンのための“モニュメント”》4点を中心とする計7点。この《V・タトリンのための“モニュメント"》は、きわめてシンプルな構成ながら、その形状からビルや樹木や人間や、十字架さえも想起させずにはおかない。これは偶然だろうが、窓の外を見ると、ビルも木も人も、あまつさえ教会の十字架も目に入ってくるのだ。この内と外、現実とアートとの交感はじつに快い。
ところで、こんな場所で見られるとは思わなかったと最初に述べた理由は2つあって、ひとつはこんな「オシャレ」な場所でという意味。余分なものを排除したミニマルアートと、ファッションブランドのルイ・ヴィトン社が頭のなかで結びつかなかったのだ。でもそれを結びつけたのは、単なる蛍光灯をアート作品として認めて購入したLV財団の慧眼にほかならない。もうひとつは、この展示空間が南向きに大きく窓の開けたつくりになっているので、壁にとりつける発光作品など見るに耐えないのではないかと思ったからだ。たしかに使いにくそうではあるけれど、大きな仮設壁2面を設けて昼間でも見やすい展示になっている。これが夜間ならもっと見栄えがするに違いない。日が暮れてからもういちど行ってみたくなった。

2017/03/02(木)(村田真)

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ワンダーシード2017

会期:2017/02/25~2017/03/26

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

若手作家による10号以内の小品を5万円以下で販売する展覧会。小池都政になってからいつまで続くかわからないけれど、こういう芸術支援策は続けていってもらいたいものだ。とはいえ、石から玉を探す(磨く)のは至難の業だけどね。今回も玉はわずかながらもあったけど、例えば池上怜子、津川奈菜、濱口綾乃、浜口麻里奈はすでに卒展かどこかで見たことがある。新しい才能なんて毎年そんなに大量発生するわけじゃない。だからおもしろい。

2017/03/02(木)(村田真)

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Tranquility─静謐─

会期:2017/03/10~2017/03/26

六本木ヒルズ A/Dギャラリー[東京都]

ガラスの松宮硝子、木彫の平山紗代、ドローイングの勢藤明紗子、切り絵の悠という4人展。と書くと共通性のない4人に聞こえるが、実物を見ると一目瞭然、みんなじつに繊細な仕事をしているのだ。特に松宮はガラスを面でも固まりでもなく、線のように扱って立体化し、勢藤はこれ以上ないくらい超極細ペンで装飾模様を展開している。もう見ていてハラハラするほど繊細きわまれり。

2017/03/02(木)(村田真)

TWS-NEXT @tobikan 「クウキのおもさ」

会期:2017/02/18~2017/03/05

東京都美術館ギャラリーB[東京都]

トーキョーワンダーサイト(TWS)の展覧会やレジデンス・プログラムに参加したアーティストから、青木真莉子、伊藤久也、友政麻理子の3人を選抜した企画展。青木は中央に壇を設けて3面のスクリーンを立て、映像を流しているが、なんか見る気しないなあ。食いつきにくいというか、すっと入っていけないんでね。伊藤は弟の死をきっかけに始めたという人体彫刻を、野原や渋谷の交差点、雪道などさまざまな場所に置いて作者とともに撮影。それらの2ショット写真を壁に並べ、向き合うように実物の彫刻を対置させている。これは明快。友政は床に椅子や机、ブルーシート、ほうき、タライなどを散乱させ、壁に映像を何本か流している。《お父さんと食事》シリーズは、松本やブルキナファソなどさまざまな場所でテキトーなオヤジを見つけ、食事しながら会話する様子を撮ったもの。《あれは、私の父です》は、そこらにあるものを「父」だと言い張るビデオ。どれも1時間前後あるので見てないが、見ないでもおもしろい。これが「食いつき」のいい作品。

2017/02/26(日)(村田真)

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