artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
ヨッちゃんビエンナーレ2017「コラージュ・キュビスム」
会期:2017/03/22~2017/03/31
オリエアート・ギャラリー[東京都]
加藤義夫氏が企画する世界最小かもしれないビエンナーレ。ヨッちゃんは年齢も身長も守備範囲もぼくとほぼ同じだが、違うのは彼がキュレーションもできること。その違いがこうして展覧会を企画する側と、それを書く側に分断するわけだ。それはともかく、同展は昨年秋に神戸で開かれたものの東京巡回になる。出品は、青木恵美子、植松琢磨、小野さおり、川口奈々子ら11人。多くの作家は、彼があっちこっちで審査員や推薦委員を務めていた展覧会から選ばれているが、ぼくも一緒に審査した展覧会もあるので、数名は知っている。大きな特徴は女性が8人、つまり大半を占めること。そのせいか全体に色があり、入念に描き込んだにぎやかな作品が多い。そんなに広くないスペースなので大きな作品は少なく、それがいっそう密度を濃くしている。
2017/03/22(水)(村田真)
周代焌 「Back To」
会期:2017/03/24~2017/04/02
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
台北市と横浜市のアーティスト交流プログラムで横浜に滞在し、BankARTのスタジオで制作していた周さんの成果発表展。福島の原発事故に触発されたという想像上の災害場面を、ロープや有刺鉄線といった具体的イメージと抽象的な色と線の組み合わせで描いている。目を引くのは支持体で、基本キャンバスなのだが、大きめの作品は枠に張らず、四隅にハトメを入れて天井から吊るしているのだ。しかも隅が引っぱられて尖ってるようにカットしたりしていて、支持体をイメージの単なる置き場にするだけでなく、それ自体でなにごとかを語らせようとしているのだ。逆に、小さめの作品は5センチほどの厚みを持たせたり、10×140センチという超横長の画面にしたり、ありきたりのキャンバス画に抵抗を試みている。
2017/03/22(水)(村田真)
鶴岡市立加茂水族館
鶴岡市立加茂水族館[山形県]
鶴岡市内から車で20分ほどの海岸沿いにある、クラゲの展示で知られる水族館。前半はふつうの水族館と変わらないが、後半はクラゲだけ、というか、クラゲだらけ。なんでクラゲかというと、想像だけど、たぶん近海でクラゲが大発生して漁業に被害をもたらしたんで、この厄介者を逆に見世物にして街おこししちゃおうじゃないかと、だれかが発案したに違いない。クラゲはいくらでも獲れるし。この発想で「ゴキブリ昆虫館」とか「雑草植物園」とかつくったら、けっこう話題になると思う。人は入らないと思うけど。ちなみにここのレストランではクラゲを使った定食やアイスも出すそうだ。イルカのショーをやる水族館でイルカ料理を出したら大問題になるけど、クラゲなら許されるのは差別ではないか?
2017/03/19(日)(村田真)
第5回 荘内教会保育園 幼児画展
会期:2017/03/15~2017/03/19
鶴岡アートフォーラム市民ギャラリー[山形県]
山形県鶴岡市にやってきました。夜の講演の前に街の文化施設をいくつか見て回る。そのひとつがこのアートフォーラム。設計した小沢明は山形市にある東北芸術工科大学の元学長で、槇文彦アトリエの初期のお弟子さんだそうだ。といわれればぼくでもなるほどと思う。正方形を基本としたオフホワイトの建築は、築12年になるのに新品同様に美しい。でも新品同様に感じるのは建築が美しいからだけでなく、あまり使われた形跡がないからでもある。館内には大きな正方形のギャラリーが2つあるが、ひとつは「幼児画展」を開催中で、もうひとつは閉鎖中。カフェも土曜の午後4時というのに閉店だ。ギャラリーもカフェも閉じていれば人は来ないし、人が来なければ閉じてしまう。負のスパイラルではないか。ところでこの「幼児画展」、タダだから入ってみたら、0歳児、1歳児、2歳児……と年齢ごとに分けて展示しているのだが、おもしろいことに3歳児からいっせいに顔らしきかたちが表われ、5歳、6歳と年齢を重ねるごとに絵がつまらなくなる(ありきたりになる)のだ。まあそのくらいのことは本で読んだりして知ってはいたが、まさか鶴岡でこんな見事な実例が見られるとはね。このアートフォーラムのすぐ近くには、妹島和世設計の文化会館が建設中で、すでにフランク・ゲリーばりの異容が姿を現わしている。あとは中身を充実させることだな。
2017/03/18(土)(村田真)
大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち
会期:2017/03/18~2017/06/18
森アーツセンターギャラリー[東京都]
超一流は少ないけど、一流はけっこう来ている。ホントホルストの生々しい対作品《陽気なヴァイオリン弾き》と《陽気なリュート弾き》、メツーの意味深な《医師の訪問》、ヨルダーンスの過剰すぎる《クレオパトラの饗宴》、テニールス2世の謎めいた《厨房》、フラゴナールとジェラールのちょっとエッチな《盗まれた接吻》、廃墟おたくロベールの《運河のある建築風景》と《ドーリス式神殿の廃墟》、おなじみクラーナハの《林檎の木の下の聖母子》など、物語性があって楽しげで明晰な絵画が多い。それに、なんかずいぶん見やすいなあと思ったら、画面にガラスの張られていない作品が多いことに気づく。ざっと数えると、ガラスの張られている作品は、85点中13点だけ。8割以上はわずらわしいガラスなしで見られるのだ。エルミタージュ美術館の英断、というより窮状がしのばれる。
2017/03/17(金)(村田真)