artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
第10回アトリエの末裔あるいは未来
会期:2015/11/20~2015/11/29
藝大の陳列館と、近くの平櫛田中の旧宅を会場にした彫刻展も10回目。今回はこれまでの出品者も含めた展示で、とくに陳列館のほうは2フロアに70人もの小品が並べられ壮観だ。木の塊からカリフラワーと台座を彫った内田麻ゆ、雑巾のようにボロボロになった人工芝を彫った田中圭介、木の突起を何百本も放射状に固めて《うに》と題した大野匠、田中の《鏡獅子》をオカマ化した根上恭美子、初音ミクを黒人化して《初音モク》にした大平龍一、うねるような木の根っこにうねるような髪の毛みたいな模様を彫りつけた木戸龍介、落下中のテナガザルをキングコングにダブらせたビル・ウォルフ、スケートボードを細かく刻んで高さ70センチほどの塔に積み上げた増井岳人、石膏でつくった手の彫刻に木目模様を描いて木彫に見せかけた宮原嵩広など、なんでこんなもの彫るかなあ的なトボケた作品が多くて楽しめた。田中邸のほうは、雲のような盆栽(盆栽のような雲か)を彫った海谷慶、木の台座の上にマックロクロスケを置いた森淳一、細長い棺桶のような木箱をつくった福迫大智、階段を下りるときにしか見られない場所に妖怪みたいな彫刻を置いた大石雪野など、木造家屋の空気を読んだ作品が多い。木彫の概念を更新させる反伝統主義のいい展覧会だ。ずっと続けてほしい。
2015/11/29(日)(村田真)
忘れたと思った?
会期:2015/11/26~2015/12/06
東京都美術館ギャラリーA[東京都]
吹き抜けの巨大空間を使用したもうひとつのグループ展。こちらは床に写真をばらまいて土足もお持ち帰りも可としたり、女性が穴を掘る映像を映し出すテレビモニターを置いたり、道で拾ったメモを額装して壁に展示したり、壁の穴に野球ボールを突っ込んだり、いろんなことやっている。そのわりに空間がスカスカなのは、会場でキャッチボールするパフォーマンスが行なわれるせいかもしれない。そもそも10個のパフォーマンスをするつもりだったのにほとんどが却下され、唯一許されたのがキャッチボールだったという……。どんなパフォーマンスをやるつもりだったんだろう。でも美術館内でキャッチボールできるってだけでもスゴイかもね。まあなんかどうも空振りな展覧会。
2015/11/29(日)(村田真)
東北画は可能か?──地方之国構想博物館
会期:2015/11/26~2015/12/06
東京都美術館ギャラリーB[東京都]
都美が選んだグループ展のひとつ。これは濃密な展覧会。「東北画」とは東北芸工大日本画コースの三瀬夏之介を中心に、在学生や卒業生が集まってスタートしたチュートリアル活動。世界の辺境である日本、の辺境である東北において絵画は可能か?日本画は可能か?を問う活動を進めてきたが、2011年の3.11以降じわじわと存在感を増し、注目を集めるようになった。今回は個人の作品も展示されてるが、《東北山水》をはじめ共同制作による数点の大作が目を引く。これらは東北をモチーフにした幻想的な風景画をシートに描いたもので、地方限定モチーフといい、日本画家によるコラボレーションといい、枠に張らないシートの展示といい、これまでの現代美術のグローバル志向を引っくり返すポテンシャルをはらんでいる。
2015/11/29(日)(村田真)
国際交流女性現代美術展
会期:2015/11/14~2015/11/25
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
日韓を軸とする50人の女性アーティストによる交流展。主旨も規模も年齢層も違うので比べるもんじゃないけれど、階下でやってる日産アートアワードを見た後で見るとツライものがある。
2015/11/23(月)(村田真)
日産アートアワード2015
会期:2015/11/14~2015/12/27
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
最終選考に残った7人のアーティストが作品を競う日産のアートアワード。2回目の今回は、米田知子、毛利悠子、岩崎貴宏、石田尚志、秋山さやか、ミヤギフトシ、久門剛史がファイナリストに残り、新作を披露している。ファイナリストに選ばれただけで賞金100万円と制作費100万円が支給されるだけあって、さすがに力作ぞろい。フランク・シャーマン宛の電報に藤田嗣治の眼鏡を置いた米田の写真、芥川龍之介と黒澤明の「羅生門」にモチーフを得た岩崎貴宏の建築モデル、壁にドローイングしながらコマ撮りして絵を動かす石田の映像、駅構内の水漏れを防ぐ駅員の応急処置にヒントを得た毛利のインスタレーションなど、甲乙つけがたい。が、みんなそれぞれ旧作の延長線上で新鮮味がなく、ドングリの背比べともいえる。そんななかで今回いちばんウィットに富んでいたのが毛利かもしれない。作品形態にデュシャンの大ガラスを引用しつつ、駅員の手仕事をブリコラージュと見なして採り入れるあたり、くすぐりどころをわきまえている。果たして彼女がグランプリを獲得。賞金はなんと500万円! と思ったら、よく見ると「総額500万円相当」となっていて、実は賞金は300万円(しかもファイナリストの賞金100万円も含まれる)で、あとは2カ月間のロンドン滞在費と副賞のトロフィー代だ。ちなみに300万円って、ゴーンの「日収」とほぼ同じ。
2015/11/23(月)(村田真)