artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

ニューアート展 NEXT 2015「田中千智 展」

会期:2015/10/02~2015/10/18

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

昨年、伊勢山に移転して初の「ニューアート展 NEXT」。今年選ばれたアーティストは、福岡の田中千智。なぜ福岡のアーティストが選ばれたかというと、もちろん才能ある作家を紹介するのに地域なんか関係ないともいえるが、それより彼女は2008年の第1回黄金町バザールのとき横浜に滞在し、2カ月間に黄金町界隈の住人107人のポートレートを制作、それを機に注目を浴びるようになったからだ。このことからもわかるように、彼女の資質のひとつは、ためらいなくサラサラッと早描きであることだ。ほかにも作品の特徴として、背景がほとんど黒く塗りつぶされていること、大半が人物画で、しかも正面から見た全身像が多いこと、そのためどこか寂しげであること、などが挙げられる。だから彼女の絵は一目見れば田中千智の絵だとわかる。これは大切なことだ。出品は《107人のポートレート》のほか、大半がここ2、3年の新作ばかり。驚くのは今年描いた100号を超える大作が13点もあること。9カ月間で、しかも出品されてない作品もあるはずだから、すごい生産力というほかない。

2015/10/18(日)(村田真)

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黄金のファラオと大ピラミッド展

会期:2015/10/16~2016/01/03

森アーツセンターギャラリー[東京都]

おおっと六本木も「黄金」だ。こちらも地中海に近いが、時代はずっと遡って古代エジプト、監修はおなじみ吉村作治センセー。そのせいか、内容はピラミッドやファラオに関する説明的な紹介が多く、金は最後に出てくるアメンエムオペト王の黄金のマスクと、いくつかの装飾品くらい。まあそのほうが勉強になっていいかもしれない。

2015/10/15(木)(村田真)

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黄金伝説 展──古代地中海世界の秘宝

会期:2015/10/16~2016/01/11

国立西洋美術館[東京都]

地中海周辺に花開いたギリシャ、ローマ、トラキア、エトルリアなどの古代文明の金の装飾品がズラッと並ぶが、金にも装飾にも関心のない者には豚の耳に小判で、へーそーですかってなもんだ。関心があるのはギュスターヴ・モローの《イアソン》をはじめとする絵画。クリムトの《人生は戦いなり(黄金の騎士)》も出ているが、こちらは金箔が貼ってあるだけで絵としては平面的だし。どうせなら国内で調達せず、《ダナエ》か《ユディットI》か《パラス・アテナ》を取り寄せてほしかった。いや《接吻》でも《アデーレ・ブロッホバウアーの肖像I》でもいいけど。ちなみにダナエの絵も出てるが、自館所蔵のマルカントニオ・バッセッティという初耳な画家によるもので、ほとんど黄金の雨が目立たない。ティツィアーノかレンブラントみたいにハデに黄金の雨を降らせてくれよお。

2015/10/15(木)(村田真)

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淺井裕介「絵はどこから来るんだろう?」

会期:2015/10/03~2015/11/07

アラタニウラノ[東京都]

壁全面を黒く塗り、上からチョークなどで線描している。独特に様式化された動植物の装飾パターンは相変わらず。しかしこれはどうやって売るんだろう、と思ってよく見たら、その上に塗料を焼きつけたタブロー状の作品が10点ほど掛かっている。彼は売るもの(タブロー)も売らないもの(壁画)も手を抜かない。ただひたすら描く。

2015/10/13(火)(村田真)

佐藤克久「…けれど難しい事に、実はそれらすべてをすっかり忘れた時に出来るのである。このようにして描かれたものが傑作である。」

会期:2015/10/03~2015/11/07

児玉画廊[東京都]

恵比寿から徒歩徒歩と白金へ。意外に近い。白いキャンバスの四隅だけ絵具を盛り上げたり、黒地に白い線を引いたように実は白い線を残して黒く塗ったり、キャンバスの下辺と上辺を底辺として三角形を描いて重なる部分に色を重ねたり、あるいはマンガや記号のような絵もある。絵画の可能性をあらゆる方法で試そうとしている、というより、可能性を一つひとつつぶしていってるようにも見える。これは無限に楽しくてツライ作業だ。

2015/10/13(火)(村田真)