artscapeレビュー
日産アートアワード2015
2015年12月15日号
会期:2015/11/14~2015/12/27
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
最終選考に残った7人のアーティストが作品を競う日産のアートアワード。2回目の今回は、米田知子、毛利悠子、岩崎貴宏、石田尚志、秋山さやか、ミヤギフトシ、久門剛史がファイナリストに残り、新作を披露している。ファイナリストに選ばれただけで賞金100万円と制作費100万円が支給されるだけあって、さすがに力作ぞろい。フランク・シャーマン宛の電報に藤田嗣治の眼鏡を置いた米田の写真、芥川龍之介と黒澤明の「羅生門」にモチーフを得た岩崎貴宏の建築モデル、壁にドローイングしながらコマ撮りして絵を動かす石田の映像、駅構内の水漏れを防ぐ駅員の応急処置にヒントを得た毛利のインスタレーションなど、甲乙つけがたい。が、みんなそれぞれ旧作の延長線上で新鮮味がなく、ドングリの背比べともいえる。そんななかで今回いちばんウィットに富んでいたのが毛利かもしれない。作品形態にデュシャンの大ガラスを引用しつつ、駅員の手仕事をブリコラージュと見なして採り入れるあたり、くすぐりどころをわきまえている。果たして彼女がグランプリを獲得。賞金はなんと500万円! と思ったら、よく見ると「総額500万円相当」となっていて、実は賞金は300万円(しかもファイナリストの賞金100万円も含まれる)で、あとは2カ月間のロンドン滞在費と副賞のトロフィー代だ。ちなみに300万円って、ゴーンの「日収」とほぼ同じ。
2015/11/23(月)(村田真)