artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
Reflection:返礼-榎倉康二へ
会期:2015/10/01~2015/10/25
秋山画廊[東京都]
榎倉さんが亡くなって20年。10年目にも教え子が展覧会を開いたが、今回は東京藝大で榎倉の薫陶を受けた数少ない女性作家だけの企画展が計3カ所で開かれてる。秋山画廊では白井美穂、豊嶋康子、日比野ルミ、福田尚代の4人の出品で、いずれも60年代生まれ。木の箱を重ねた上に黄色い絵具をレモンのように固めて連ねた環を載せた白井、手の届かない壁の上のほうに役立たずの本棚をとりつけた豊嶋など、難解な作品が多いのは榎倉ゼミならではのことか。
2015/10/21(水)(村田真)
川原直人「クロノスタシス」
会期:2015/09/26~2015/10/24
タカ・イシイギャラリー[東京都]
写実絵画で知られる川原の裸体画が7点ほど。写真をそのまま引き写したフォトリアリズムのようでありながら、なにか違う。どこか古典的な匂いがする。でも西洋の古典と違って泥臭く、なんとなく懐かしい感じ。解説を読むと、明治期の洋画家、原撫松を意識したらしい。なるほど、この光、このポーズ、黒田清輝以前の脂色の油絵を想起させる。撫松が現代によみがえったらきっとこんな絵を描くだろう、という絵を実際に描いてみせた。
2015/10/21(水)(村田真)
フランク・ゲーリー:パリ-フォンダシオン ルイ・ヴィトン建築展
会期:2015/10/17~2016/01/31
エスパス・ルイ・ヴィトン[東京都]
21_21に続いてオープンしたフランク・ゲーリーの建築展。こちらは昨年パリのブーローニュの森に開館した、ゲーリー設計のルイ・ヴィトン財団美術館に絞った展示なので、見やすいし、わかりやすい。半透明の素材で外側を覆われたこの美術館は、ゲーリーいわく「フランスの深遠な文化的使命を象徴する壮大な船」だという。そのせいか、帆を掲げた帆船のようにも見えるし、またゲーリーお気に入りのモチーフである魚も想起させる。いずれにせよ流動体みたいな建築だ。マケットはこれでもかというくらい繰り返しいろんな素材で試しているが、もっと驚くのは最初のスケッチで、ほとんど線がのたうってるだけ。このサルのような奔放な線からすべてが始まるのは象徴的だ。
2015/10/21(水)(村田真)
東京ミッドタウン・アワード2015受賞作品展示
会期:2015/10/16~2015/11/08
プラザB1F展示エリア[東京都]
デザインとアートの2分野のコンペ。場所柄なのか、圧倒的にデザインコンペのほうがおもしろい。今年のデザインのテーマは「おもてなし」。羽根に国旗を印刷し、その国の言葉を話せる人が身につける「ことはね」、プチプチに浮世絵を印刷して包み紙にした「浮世絵プチプチ」、横書きしかなかったレシートを縦書きにした「縦書きレシート」、その上に載せればスマホや携帯に充電してくれる「充電ざぶとん」などがある。グランプリは「ことはね」(吉田貴紀+栗原里菜)、準グランプリは「浮世絵プチプチ」(でんでんたますこ)。アートはテーマなしで、ありえない超高層ビルを真上から俯瞰して描いた田島大介の《五金超大国II》や、ロッカーを地下室に見立てて小さな階段をつけ、奥に外の風景写真を貼った上坂直の《東京的遭遇:六本木》がようやく合格圏。あとは色やかたちの新奇さを狙った程度の作品だった。案の定、グランプリは田島で、準グランプリは上坂でした。
2015/10/19(月)(村田真)
フランク・ゲーリー展──I Have an Idea
会期:2015/10/16~2016/02/07
21_21デザインサイト[東京都]
グッゲンハイム美術館ビルバオの設計で一躍世界的に知られるようになった建築家、フランク・ゲーリーの展覧会。なんでこんなに歪んでるの的な彼のデコン建築がどのように発想され、どんなプロセスを経て固まっていくのかを、ドローイングやマケット、言葉、映像などで紹介している。特に初期の段階のマケットは、紙、布、木片、金属、ガラスなどさまざまな素材を用いて、あらゆる形態の可能性を試しているように見える。これほど自由に発想し、それを実現できるのはコンピュータあってのことだろう。複雑な曲面をもつ建築の設計も建材の成形も、コンピュータの進歩がなければ不可能だったに違いない。そのため彼は設計ソフトを開発する会社ゲーリー・テクノロジーズを設立したほどだ。彼の建築のほとんどが90年代以降に実現するようになったのはそのためだ。これはザハ・ハディドも同じだろう。余談だが、彼は89年に建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を、92年に高松宮殿下記念世界文化賞をそれぞれ受賞しているが、調べてみると、プリツカー賞を受賞した建築家の多くが数年後に世界文化賞を受賞していることがわかる。ゲーリーのほか、J・スターリング、R・マイヤー、丹下健三、O・ニーマイヤー、A・シザ、槇文彦、安藤忠雄、N・フォスター、R・コールハース、ヘルツォーク&ド・ムーロン、Z・ハディドと12人にのぼる。逆に、世界文化賞の受賞後にプリツカー賞を受けた者は6人しかいない。世界文化賞は功成り名を遂げた者に贈られるダメ押し賞かい。
2015/10/19(月)(村田真)