artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

松浦浩之「Super Acrylic Skin Trigonal Clone」

会期:2015/09/12~2015/10/17

東京画廊[東京都]

戦闘姿の少年少女を描いたアクリルの大作。輪郭線がはっきりしていて、手の痕跡をほとんど残さない。下地にプラチナ箔を置き、その上からモノクロームに近い抑え気味の色彩でフラットに塗り、唇や乳首だけ濃いピンクで彩っている。スーパーフラットなオタク絵画といってしまえばそれまでだが、現代の肉筆浮世絵と捉えれば案外100年後まで生き延びるかも。

2015/09/15(火)(村田真)

絵画を抱きしめて Part2「絵画に包まれて」

会期:2015/08/28~2015/09/20

資生堂ギャラリー[東京都]

パート1は大作絵画を中心にオーソドックスに見せていたが、パート2では絵画をのびのびインスタレーションしている。いちばん遊んでるのは流麻二果で、絵画をシートに拡大プリントしたものを切り抜いて床に敷き、壁に不定形のキャンバス画を掛けて、全体で巨大な絵具が飛び散ったような設定。佐藤翠はいつものようにクローゼットや靴箱を描いているが、いつもと違うのはキャンバスではなく鏡の上に描いてること。だから余白の部分はこちら側を映し出す。小品も30点ほど棚に並べているが、これも棚板が鏡になってるので絵や壁に光が反射してにぎやかだ。阿部未奈子だけは3点1組の大作を中心とするオーソドックスな展示。「絵画を抱きしめて」といいながら「絵画に包まれて」しまったじゃないか。

2015/09/15(火)(村田真)

試写『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』

ガウディのサグラダ・ファミリア教会を初めて知ったのは大学1年のとき、高見堅志郎先生の建築史の授業でのこと。奇怪な形状にもたまげたが、あと100年か200年は完成しないだろうという時間感覚の違いにもおったまげた。実際に見に行ったのはそれから10余年後で、作業は永遠に終わらないんじゃないかってくらい牧歌的に行なわれていたが、さらに10余年後に訪れたときにはずいぶん工事が進んでいて、これはひょっとしてぼくが生きてるうちに完成するかもと思わせた。この映画によると2026年に完成予定だというから急ピッチで工事が進んでることがわかる。映画ではとくにこの建築の秘密が新たに解き明かされるとか、開かずの小部屋にカメラが初侵入なんてこともなく、異貌の教会と主任彫刻家の外尾悦郎をはじめとする関係者の証言を淡々と映し出すだけだが、ガウディ好きには必見の作。


映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』予告編

2015/09/15(火)(村田真)

モザイク展2015

会期:2015/09/15~2015/09/27

横浜市民ギャラリーあざみ野[神奈川県]

モザイク展の賞の審査を頼まれた。モザイクについては無知だけど興味があったので引き受けた。興味があったのは、まずモザイクは本来「不動産美術」であるにもかかわらず、ここではタブロー、つまり「動産美術」として展示されること。その整合性を確かめてみたかったというのがある。また、モザイクは色素を並べてひとつのイメージを形成する点で、点描画やデジタル画にも通じること。さらに、ポルノにおけるモザイク(じつはモザイクといえば一般にこれがいちばん知られている)のように、はっきり見せるのではなく曖昧にボカすためにも使われること。ほかにも、学校の卒業制作でしばしば見かけるように共同作業によるところが大きいこと、などだ。つまりモザイクは古典的な技法であると同時に、きわめて現代的な問題をはらんだメディウムでもあると思う。そんな視点で選んでみた。大賞は、街の遺跡を俯瞰したような図柄の岩田英雅による作品。画素の一つひとつが1軒の家あるいは1個の石材にも見え、不動産としての記憶を宿していると感じられたからだ。二席は、高倉健の肖像をスーパーリアリズム風に描き、裏から光を当てた山本真平の作品。これは現代のデジタル表現にもつながるうえ、ほかに類似作品がないため選んだ。三席は、白い小さな大理石を矩形の画面にびっしり埋め込み、その脇にモノクロ写真を添えた妙川幸子の作品。作者の意図を無視していえば写真が余計で、白い大理石だけだったら大賞争いに加わっていただろうと思う。つまりミニマルな純粋モザイク画ってわけだ。以下、佳作と奨励賞は略。モザイクでなにかを表現するのではなく、モザイクを表現してほしいと思う。

2015/09/14(月)(村田真)

第100回記念二科展

会期:2015/09/02~2015/09/14

国立新美術館[東京都]

かつて前衛の拠点だった美術団体も100年を超えるとどうなるか、これを見ればわかる。1階はまだ展覧会の体をなしているが、2階に上ると自由度が増して“芸術”から徐々に解放され、3階では宙にデカイ顔が浮かんでたり、建物が平気で傾いてたり、もはやなんでもありのカオス状態。ここまで入選基準をゆるめるのもさぞかし勇気がいったことだろう。工藤静香や押切もえも入選していた。作品についての論評は差し控えるが、ふたりの作品の前に「館内では基本的に撮影禁止です」との看板が立っていたのがおかしい。有名人の作品を見つけるにはもってこいの目印になっていた。

2015/09/13(日)(村田真)