artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

奥田善巳 展

会期:2013/11/23~2014/03/09

兵庫県立美術館[兵庫県]

名前は記憶になかったが、作品は関西で何度か見ていた。昭和ヒトケタ生まれで、60-70年代は概念的な平面作品をつくっていたが、80年代から2011年に亡くなるまで一貫して、黒地に単色の絵具(色はさまざま)でタッチを強調した抽象表現主義風の線描画を制作。晩年には塗り残された黒地がなにか記号のように浮かび上がり、地と図が反転した。こうして一堂に並べてみると壮観だが、1点1点味わうもんでもないし、21世紀にウケる作品ではないな。

2014/01/24(金)(村田真)

フルーツ・オブ・パッション ポンピドゥー・センター・コレクション

会期:2014/01/18~2014/03/23

兵庫県立美術館[兵庫県]

滋賀県に用があったので、ついでに神戸まで足を伸ばす。こちらのサブタイトルは「ポンピドゥー・センター・コレクション」。まずイントロダクションでダニエル・ビュレン、ゲルハルト・リヒター、ロバート・ライマンら20世紀の巨匠6人の作品を展示し、続いてPACメンバーによって集められた19人の「情熱の果実(フルーツ・オブ・パッション)」が紹介されている。年代で見ると、巨匠たちは1910-30年代生まれ、果実は40年代生まれのイザ・ゲンツケンとハンス・ペーター・フェルドマンを例外に60-80年代生まれで、なぜか50年代生まれがひとりもいない。で肝腎の作品だが、これもブリカンのコレクション展に似てロクでもないものも含まれている。イントロの巨匠たちがみなミニマル志向なのに対し、果実たちは色もかたちもあり、動いたり光ったり音が出たりにぎやか。つまりモダニズム対ポストモダニズムに分かれているのだが、後者はどこかものたりない。日常生活の様子を映し出すモニターを積み上げてアパートのように見せるレアンドロ・エルリッヒは、おもしろいけどそれだけだし、ガラクタを並べて光を当て壁に影を映すフェルドマンはクワクボリョウタみたいだし、エルネスト・ネトの吊るす作品とツェ・スーメイの映像作品は何度も見てるし。でも花火と砲火が錯綜するアンリ・サラの今回の映像はよかった。あと、マグナス・フォン・プレッセンとトーマス・シャイビッツはどちらも筆触を残した建築的な抽象絵画で、ちょっと目を惹く。しかもふたりともベルリン在住のドイツ人で、年齢も1歳違いしか違わない。調べてみて驚いた。なんとフランス生まれは19人中ひとりしかいない(パリを拠点にしているのは7人いるが、ベルリン拠点も同数いる)。さすが外国人に寛容と敬服すべきか、アーティストが育たないことに同情すべきか。

2014/01/24(金)(村田真)

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プライベート・ユートピア──ここだけの場所

会期:2014/01/18~2014/03/09

東京ステーションギャラリー[東京都]

ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在、というのがサブタイトル。ブリカンがエライのは、10年にいちどくらい日本にイギリス現代美術を紹介していること。日本も見ならってほしいなあ。出品作家は60年代生まれが大半を占め、90年代なかばにアートシーンを騒がせたYBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)と重なり、半数以上がターナー賞を受賞したりノミネートされたりしたという。が、デミアン・ハーストやレイチェル・ホワイトリードは出ていない。おそらく以前に出たか、高すぎてコレクションできなかったかだ。さて肝腎の作品だが、ピンからキリまで取りそろえてある。もともとイギリス現代美術というと、ウィットに富んでるけどそれ以上でなかったりするのだが、その傾向は近年ますます進んでいて、たとえばウッド&ハリソンの映像やアンナ・バリボールの光を使ったインスタレーションみたいに、だからなんなんだといいたくなるような作品も少なくない。逆によかったのは、陶器の表面に男性器をめぐる物語絵を描いたグレイソン・ペリー、ひとりのプロレスラーの人生をポップな壁画と映像で表わしたジェレミー・デラー、だれのものかもわからない写真を拡大してキャンバスに描くローラ・ランカスターなどだ。

2014/01/19(日)(村田真)

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ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ

会期:2014/01/11~2014/03/30

原美術館[東京都]

ベルギーのゲントを拠点とするアーティスト。2年前にゲント市内で開かれた「トラック展」には彫刻を出していたが、90年代なかばまでは写真を使っていたという。でもボレマンスといえばベラスケス調のサラッとした筆触が魅力の絵画でしょう。絵は独学で学んだそうだが、それにしては実に達者。透明の仮面をつけた顔などの描写はかなり高度な技術を要するはずなのに、こともなげに描いている(ように見える)。ゲント出身というからつい油絵の伝統と結びつけて考えたくなるけど、それより写真をやってた経験のほうが大きいんじゃないかな。リヒターのように視線が明らかにカメラアイだもん。ともあれ人気急上昇で、需要に供給が追いつかないというのもうなずける。

2014/01/10(金)(村田真)

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見ること・描くこと──油画技法材料研究室とその周縁の作家たち

会期:2014/01/06~2014/01/19

東京藝術大学大学美術館+陳列館+大学会館[東京都]

佐藤一郎は画家であると同時に、いや多分それ以上に研究者であり教育者であった。その成果を発表するのがこれ。佐藤が指導に当たった1976年からの油画技法材料研究室出身者の有志約150人の近作・新作に、在学生や歴代教員らを加えた200人近い作品が並ぶ。いわゆる具象絵画が中心で、さすが技法材料だけあってうまいなあと感心するが、ちゃんと抽象、立体、写真、CG、映像、絵本の原画などもある。また抗議が来そうな「食用人造少女・美味ちゃん」を出した会田誠、0.04秒で一周する歯車から22兆8800億年で一周する歯車まで37個の歯車を連動させた岡崎泰弘、旅先のお土産やペナントを手づくりして並べた小山真徳、モノクロ画面だがよく見るとカッコいい筆跡が残ってる伊勢周平、「受胎告知」の祭壇画にアニメのキャラと津波と原発事故を正方形の画面に収めた森洋史などが目を惹く。

2014/01/09(木)(村田真)