artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
アサヒ・アートスクエア オープン・スクエア・プロジェクト2014「Alterspace──変化する、仮設のアートスペース」
会期:2014/01/11~2014/02/02
アサヒ・アートスクエア[東京都]
浅草のアサヒ・アートスクエアのスペースを公募で選んだキュレーターに全面開放し、創造的に活用してもらおうというプロジェクトの第3弾。選ばれたキュレーターは水田紗弥子で、彼女の提案したのが「オルタースペース」というもの。これはインディペンデント・キュレーターならではの発想で、展覧会というものを特定の場所に固定させずに移動、変化、継続していくためのプラットフォームとしてとらえている。彼女によれば「架空の公園のような、移動式サーカスのような、四次元ポケットのような」ものだという。展示は、水田企画の日中韓7人のアーティストによる「乱視の光」に加え、中村土光企画の日替わり個展と対話による「なんかいう/考え中」、近藤恵介企画の「12ヶ月のための絵画」、CAMP企画の「漂流メモ」なども混在し、全体でオルタースペースを形成している。段ボールやベニヤを多用したストリート系の作品が多いうえ、ステージやカフェもあり、あっちでは映像が流され、こっちではシンポジウムが行なわれ、バザールみたいににぎやか。それはいいのだが、個々の作品を見てもたいしておもしろくないというか、気が散って集中できないというか、そもそもどっからどこまでが誰の作品かもわかりづらいのだ。まあ公園だってバザールだって「誰の作品か」なんて考えたら楽しめないし。
2014/02/01(土)(村田真)
チャールズ・ウォーゼン
会期:2014/01/17~2014/02/14
ギャラリーt[東京都]
ウレタン樹脂による彫刻が10点ほど。洋菓子か海中生物を思わせるユーモラスな形態と毒々しい色彩は、最初に知った4半世紀前と変わらない。丸っこくてデロンとした印象は、流動的なウレタンを成形するとき型にはめないで重力に任せたから。それを床置きと壁掛けの二刀流で見せている。ケッタイな彫刻だ。
2014/01/31(金)(村田真)
3331アラート!
会期:2014/01/25~2014/02/03
3331アーツ千代田[東京都]
3331で毎年開催している「千代田芸術祭」で受賞した11人による作品展。人体や自分の脳腫瘍のレントゲン写真をドローイングする桃源、布の上に編み目状のパターンを重ねて描いていく渡瀬愼也、20年間の自分を撮った写真をつなぎ合わせて映像にした古跡哲平、みずからの身体の記録と痕跡を死ぬまで作品化し続ける加瀬才子、などの作品に目が止まった。こうして選んでみると、ある共通する傾向が浮かんでくる。というより、ぼくの好みが浮き彫りにされるわけですが、それはモチーフを外に求めず内的欲求に従って再構築し、しかもそれを継続していくことですかね。でもほんとのことをいうと、いちばん心を揺さぶられたのは人形劇で使う絵や道具を出していた森脇ひとみの作品。人形劇はどうでもいいのだが、その絵がじつに屈託なく描かれていて、絵を描くこと、創作することの喜びが伝わってくるのだ。これに比べるとさきほど挙げた作品たちの貧相さが目についてしまう。崇高な貧相だけどね。
2014/01/31(金)(村田真)
MAMプロジェクト020 ガブリエル・アセベド・ベラルデ
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
ペルー出身のアーティストで、2本の映像作品を上映している。1本は、たくさんの子どもたちからひとりが選ばれて舞台に上げられ、ボンッとフラッシュを当てられて舞台を下りるということを繰り返すアニメ。これはまさにいま見てきたばかりの、「だれでも15分は世界的な有名人になれる」というウォーホルの言葉をアニメ化したものだろう。もう1本は自然史博物館を舞台にしたもので、画面中央にティラノザウルスの再現模型を置き、周囲が動いたり光ったりするのに恐竜だけは動かないという映像作品。どちらも哲学的だ。
2014/01/31(金)(村田真)
アンディ・ウォーホル展:永遠の15分
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
ピッツバーグのウォーホル美術館のコレクションを中心に、絵画、版画、立体、写真、映画など約400点を出品する大規模な回顧展。いま絵画、版画、立体……と羅列したが、ウォーホルの絵画は初期のものを除いて大半がシルクスクリーンを用いているので、版画との境界が曖昧だ。同じく立体も箱の表面に「Brillo」とか「HEINZ」とか商標を印刷しただけのものが多く、むしろ立体版画というべきかもしれない。でも絵画の場合、図こそシルクスクリーンで刷ってるけど、地にはブラッシュストロークを効かせたものが多く、必ずしもコピーに徹しようとしていたわけではないようだ。このへんの曖昧さがウォーホルらしいといえばウォーホルらしい。ほかにも、ポップアート以前のブロッテド・ラインを多用したイラストはベン・シャーンの線描画とそっくりなこと、地塗りの上にシルクで刷るだけでなく、シルクの上に透明系の絵具をかぶせた絵もあることなど、いろいろ気づかされることが多かった。また、初めて見る作品もいくつかあった。とくに下端の欠けた太陽を画面中央に置いた《夕陽》にはびっくり。沈みゆく「日の丸」の皮肉か、モネの《印象─日の出》のパロディか。
2014/01/31(金)(村田真)