artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
アーティスト・ファイル2009──現代の作家たち
会期:2009/03/04~2009/05/06
国立新美術館[東京都]
出品は石川直樹、宮永愛子、斎藤芽生、津上みゆきら9人。とくにテーマを設けずに、学芸スタッフが選んだ注目すべきアーティストたちだそうだ。そのせいか、絵画あり写真ありインスタレーションあり、問題意識もばらばらでまとまりがない。年代もなぜか30代と50代に分かれ、40代は金田実生ひとり。たまたま日本のアートシーンをすくってみたらこうなりましたって感じ。好みでいえば、闇夜のなかで妄想をふくらませつつシコシコ細密に描いてる斎藤と、昼の光の下で思いっきりストロークを振るう津上が圧倒的。
2009/03/03(火)(村田真)
YOKOHAMA創造界隈コンペ2008受賞作品展
会期:2009/02/27~2009/03/08
ZAIM別館[神奈川県]
「開港150周年祝祭部門」コンペの受賞作品展。受賞したのは、コケの生えた王蟲(オウム)がくるくる回転したりするエコっぽいインスタレーションの足立喜一朗と、部屋をスタジオ代わりにして会期中いろんな人と制作する梅津庸一のふたり。プランも完成作もすっきりまとめあげた足立に対して、梅津はプランの段階からグチャグチャで、実際にガラクタを散乱させたようなインスタレーション(でもじつは巧みに配置されている)を見せ、好対照をなしていた。あ、ぼくも審査員のひとりです。
2009/03/01(日)(村田真)
ZAIMフェスタ2009
会期:2009/02/27~2009/03/08
ZAIM別館[神奈川県]
ZAIM別館を使うおそらく最後のフェスティバル。3階では入居者の作品展が行なわれている。曽谷朝絵が真っ白に塗った壁と床に虹色のライブペインティング、フランシス真悟が壁に細長い紙を張って公開制作したのは、これが最後の機会だからだろう。ところで会期中、曽谷さんのペインティングにイタズラ描きをした不届き者がいるらしい。でも観客参加型ペインティングと勘違いしたとすれば怒るに怒れない。それだけ彼女の絵が描く喜びにあふれ、見る者を誘発する力を備えていたともいえるからだ。
ZAIM FESTA 2009:http://za-im.jp/zaimfesta2009/
2009/03/01(日)(村田真)
ルーヴル美術館展──17世紀ヨーロッパ絵画
会期:2009/02/28~2009/06/14
国立西洋美術館[東京都]
「絵画の黄金時代」といわれる17世紀から71点の出品。有名どころではフェルメールの《レースを編む女》をはじめ、ラ・トゥールのロウソク画、フランス・ハルスの道化師像、クロード・ロランの古代風景などがオススメですね。ル・ナン兄弟の匂ってきそうな貧乏家族、オスターデやステーンの陽気な酔っ払い、フランス・フランケンの分割画面も見ものだし、アブラハム・ミニョン、ヤン・ブリューゲル(父)、ヘリット・ダウらの驚異的な細密画も必見。でもベラスケスとレンブラントは小品の部類で少しがっかりだし、弟子任せのルーベンスにはもっとがっかりしました。あと、額縁にも注目。フェルメールの絵よりはるかに大きい額縁に驚いたり、ネームプレートのついた巨大なルイ様式の額縁にルーヴルの空気を感じたり。
ルーヴル美術館展:http://www.ntv.co.jp/louvre/
2009/02/27(金)(村田真)
全光榮 展
会期:2009.2.14~2009.3.15
森アーツセンターギャラリー[東京都]
磯の岩肌みたいにゴツゴツとして、ところどころ穴のあいた作品──最近、海外のアート雑誌の広告でも見かける全光榮(チョン・クァンヨン)の作品だ。図版で見る限り「ウソっぽいなあ」と感じていたが、森美術館の下のギャラリーでやってたので実際にどんなものか見に行った。ゴツゴツした感触は、大きさの異なる三角形のポリスチレンフォームを韓紙で包み、木枠にはめ込んでレリーフ状にしているから。穴があいてるように見えるのは、その部分だけ染料で染めて陰影をつけているから。テマヒマはかかっているけど、早い話、伝統的な素材を売りものにした「だまし絵」にすぎない。立体もあって、パッと見、戸谷成雄の彫刻を思わせるものの、よく見るとハリボテ感がありあり……。なぜこんな作品が階数もショバ代も超高いギャラリーで展示され、おまけに南條史生森美術館館長の序文入りの売れそうもない豪華なカタログまでつくられるのか、事情に疎いぼくには理解できないのであった。
2009/02/21(土)(村田真)