artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

東京五美術大学連合卒業・修了制作展

会期:2009.2.19~2009.3.1

国立新美術館[東京都]

見た順に記すと、まず造形大。ここの絵画専攻はいつもインスタレーションや映像が混じってごちゃごちゃとにぎやかだ。絵具を塗り重ねて引っかき、ダブルイメージを生み出した平下英理のペインティングがすばらしい。隣の多摩美は全体にレベルが高い印象だが、数が多いだけに愚作も目につく。ここでも絵具を重ねて微妙な味わいを出す大橋笑子の作品が目を惹いた。日芸はいまだ20世紀、それも50~60年代で停滞している感じ。道は遠い。2階はまず女子美。牛の出産シーンを描いた絵を見て、たしか2年ほど前にも同じような絵を出してた学生がいたなあと思ったら、同じ井澤泉だった。大学院に進んでいたのね。あとはBankARTでも見覚えのある作品が多い。最後、武蔵美は質も量も多摩美とタメ張ってる。古そうな掛け軸3点の上に都市風景を描いた高橋哲也の作品にはちょっと驚いた。金持ちなのか? 田畑に落下中の10人くらいの裸婦を真上からペインタリーなタッチでとらえた川崎浩由にも驚いた。こうして見ると、どんな作品に反応するかで逆にいまの自分の好みがわかるなあ。

2009/02/21(土)(村田真)

東京ディズニーリゾート写真展

会期:2009.1.30~2009.2.25

フジフィルム・スクエア[東京都]

ディズニーランド自体が立体ヴァーチャルみたいな世界だから、それをデジカメで撮ったこれらの写真にはなんの違和感もない。個人的には「東京ディズニーリゾート油絵展」をやってみたい。ディズニーランドにイーゼル立てて城や山を描くの。これは違和感たっぷりだ。
東京ディズニーリゾート写真展:http://www.tokyodisneyresort.co.jp/tdr/japanese/photo/index.html

2009/02/21(土)(村田真)

ざ・てわざ

会期:2009.2.17~2009.2.23

日本橋三越本館6階美術特選画廊[東京都]

「ざ・てわざ」。逆から読むと「ざわて・ざ」。意味がない。ここでいう「てわざ」とはひたすら精緻なリアリズム表現のこと。でもリアリズムを通り越してリアル感が希薄だ。しかもそれが乾いていればいいのだけど、なぜかじっとり湿っている。それは招待作家として展示された中国の冷軍のウルトラスーパーリアリズム絵画と見比べてみればよくわかる。つまり冷軍のは「現代美術」で、日本人のは「洋画」なんですね。

2009/02/20(金)(村田真)

マーク・ロスコ──瞑想する絵画

会期:2009.2.21~2009.6.7

川村記念美術館[千葉県]

1958~59年、ニューヨークのシーグラムビル内のレストランを飾るために制作されたロスコの《シーグラム壁画》。結局レストランには飾られず、30点の連作はイギリス、アメリカ、そして日本に分散してしまう。今回はそのうちの半数を集めたもの。その15点が並ぶメイン会場に入ると、ちょっと感動的。薄暗いと感じるほど照明を落としたなか、広い展示室の4つの壁面のやや上方に、ワインレッドを主調とする絵画がわずか5センチ間隔で並んでいるのだ。ロスコはこの連作の展示に関して特別な指示は出してなかったらしいが、もともとレストランの壁を飾るためにつくられたことなども考えて、このような展示になったという。長時間「ロスコ浴」を楽しむには最適の展示かもしれない。

2009/02/20(金)(村田真)

アジアとヨーロッパの肖像

会期:2009.2.7~2009.3.29

神奈川県立歴史博物館[神奈川県]

アジア人の描いたアジア人とヨーロッパ人、ヨーロッパ人の描いたヨーロッパ人とアジア人の肖像を、東西の「接触以前」「接触以降」「近代の眼」などに分類整理した展覧会。接触以前の勝手な想像で描いた怪物的な肖像もおもしろいが、接触まもないころの東西混淆した異様な肖像画に惹かれる。なかでも、工部美術学校の教師ヴィンチェンツォ・ラグーザと結婚してイタリアに渡ったラグーザ玉が、望郷の念にかられて描いた《故国の思い出》という作品は、なかば西洋人と化した日本人が記憶をもとに日本の情景を油絵で描いたという、三重にも四重にも反転した構造をもつ実に味わい深い絵。でもここでの展示は一部なので、残りは葉山で見なくては。

2009/02/17(火)(村田真)

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