artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
戦争と芸術III─美の恐怖と幻影─展
会期:2009.1.16~2009.2.5
京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ[京都府]
阪急大山崎から河原町に出て京阪に乗り換え、終点の出町柳からタクシーで京都造形へ。なかなか不便だ。飯田高誉渾身の企画「戦争と芸術」展も、3回目にして初めて見る。しかも最終日。今回は防衛省防衛研究所から借用許可を得た藤田嗣治《重爆》をはじめ、横尾忠則、宮島達男、古井智、山口晃、佐々木加奈子、大庭大介の出品。藤田作品は借用の努力と情熱は認めるが、正直いって肩透かし。逆に、この程度の(といってしまう)作品でも簡単に借りられないところに、いまだ日本の「戦争と芸術」の問題があるのでは。もうひとつ、藤田以外の作品を、展覧会名を伏せて見せたとき、はたして何人が「戦争」という主題に気づくだろうか。いいかえれば、戦争という主題に慣れない日本のアーティストを、われわれは誇るべきか、恥じるべきか。
2009/02/05(木)(村田真)
「さて、大山崎」山口晃 展
会期:2008.12.11~2009.3.8
アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]
のぞみで京都に出て、在来線で山崎へ。地理的にも歴史的にもネタに事欠かない大山崎に取材した山口の個展。《惟任日向守》《羽柴筑前》《千宗易》はそれぞれ地元ゆかりの明智光秀、豊臣秀吉、千利休の肖像画。秀吉の兜は栓抜きか。大作《最後の晩餐》では明智光秀ら武人が食卓を囲む。よく見ると、ワインやキッコーマン醤油も並んでる。いやアッパレ、あきれるほど見事。なにも考えずに見れば、桃山の重要美術品といわれてもうなずいてしまいそう。ビミョーなのは新館の「壁面見立」シリーズ。コンクリート打放しの壁の模様に「大鰐」「香炉峰」「沢蟹」などのパターンを見出し、スポットライトを当てて作品としている。さすがに新館まで新作で埋めきれなかった苦肉の策かと同情しかけたが、待てよ、これこそ大山崎ならではのサイト・スペシフィック絵画ではないか。先客のモネや安藤忠雄ともコラボしてるし。と感じ入ったしだい。
2009/02/05(木)(村田真)
松本秋則展──タイオン演奏会
会期:2009.1.27~2009.2.5
ストライプハウスギャラリー[東京都]
タイオンとはギリシア神話に登場する風の神で、通りすぎるときシャラシャラと音をたてる……というのはウソで、体温のこと。天井から例によってアナログなサウンドオブジェが吊り下がっているのだが、今回は風でも電気でもなく、その下に立った人の体熱で起きるわずかな上昇気流で装置を回転させ、音を出すという。実際に立ってみたら、数秒後に装置がゆっくりと回転を始めた。ぼくはほかの人よりよくまわるみたい。別に体温が高いのではなく、新陳代謝が激しいのだそうだ。そのまわり方や音でその人の体調がわかったりしたらスゴイというか、まったく別の装置になってしまうわね。ともあれそんな期待というか心配というかをかけさせるほど、松本氏は境界線を突っ走っている。
2009/02/04(水)(村田真)
加藤チャコ「スローアートとオーストラリア」
会期:1/31
プロジェクトスペースKANDADA[東京都]
メルボルン在住のアーティスト、チャコさんの講演会。オーストラリアのエコロジカルでエフェメラルな「スローアート」を紹介。彼らは売るために作品をつくるのではないし、展示期間が過ぎれば作品はあとに残らないから、どうやって食っていくかが問題となる。これはある意味でプロのアーティストの否定であり、極論すればモダニズムへの挑戦である。そこまでいってないけどね。
2009/01/31(土)(村田真)
LYON to YOKOHAMA/LUMIERE BROS to SHIMURA BROS
会期:1/23~2/8
創造空間9001[東京都]
幾重にも重ねたスクリーンの向こうから機関車が走ってくる映像が映し出される。これは9001における「YOKOHAMA創造界隈コンペ2008」の受賞作品。世界で初めて上映された映画は、リュミエール兄弟による機関車の疾走するシーンだったといわれているが、それを日本で初めて鉄道が走った桜木町で再現してみた作品。作者はシムラ兄弟。アイディアはすばらしいし、東急東横線桜木町駅の跡地ならではのオリジナルなプランなのだが、見せ方や空間の使い方にはもう少し工夫の余地がある。
2009/01/26(月)(村田真)