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ナショナル・ギャラリー・シンガポール

2017年07月15日号

[シンガポール]

ナショナル・ギャラリーは、1930年代の旧最高裁判所と20年代の旧市庁舎をガラスの大屋根でつなぎ、地下から各展示にアクセスする巨大施設だった。草間彌生展では列柱にもドットの装飾をつけ、同時にチルドレンズ・ビエンナーレを開催していたことから、チケット売り場からものすごい行列が続く。しかし、歴史を振り返る常設展示のエリアは閑古鳥で、これは日本と同じ状況である。じつは常設の内容がとても充実しており、旧市庁舎側はシンガポール、旧最高裁側は東南アジアの近現代美術史を時代背景を踏まえて丁寧に紹介し、体系立てて整理していた。特に後者はインドネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジアなど、他国の前衛芸術運動にも焦点を当て、シンガポール主導で東南アジアの近現代美術史をまとめるぞ、という気合を感じる。

写真:左上=ナショナル・ギャラリー模型 右上から=旧最高裁判所、シンガポールの現代美術、草間彌生展

2017/06/12(月)(五十嵐太郎)

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