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五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

片山正通的百科全書 Life is hard... Let’s go shopping.

会期:2017/04/08~2017/06/25

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

彼が収集したコレクションを見せる展示だが、さすがにその内容は独自の審美眼をもち、はるかにお金をかけて実施された村上隆のそれに比べると弱い。が、会場を訪れ、狙いは必ずしも、それでないことがよくわかった。すなわち、いつもは事務所や家に置くコレクションを、インテリアデザイナーとしていかに見せるかの会場デザインこそがポイントである。だから、やたらと壁が多い。なお、片山コレクションはポップやセクシーなものが多い。建築系ではシャルロット・ペリアンとプルーヴェの家具の部屋が楽しい。現代アートの目玉は、最後に設けられたライアン・ガンダーの部屋であり、大阪の個展と同時でタイミングがよい。ライアンは自作が購入されたら所有者の好きなようにしてよいと言っていたが、まさにそのとおりに構成されている。

2017/05/03(水)(五十嵐太郎)

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N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅

会期:2017/02/04~2017/06/11

森美術館[東京都]

南インドの作家であり、ひたすら人物像を反復して描くことを特徴としている。が、そこに現代的なテーマを組み込み、グローバル資本主義にさらされる社会状況への批判としての寓意画を制作する。展示の後半は、カラフルな筆致のストロークが冴える作品が続く。まったく知らない作家だったが、森美術館の作品解説は丁寧で感心する。

2017/05/03(水)(五十嵐太郎)

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ライアン・ガンダー ─この翼は飛ぶためのものではない

会期:2017/04/29~2017/07/02

国立国際美術館[大阪府]

大阪へ。ライアン・ガンダー展@国立国際美術館。注目の現代アートというよりも、美術史の文脈を踏まえ、脱臼させるコンセプチュアル・アートゆえに、美術館という制度的な箱そのものへの批評的な介入という側面が個人的に楽しめた。今回は常設エリアの全体も彼によるセレクションで構成されており、ペアで異なるアーティストの作品を並べることで新しい意味を見いだす試みである。企画展の延長として、美術館のコレクションも鑑賞できる仕掛けだ。

2017/05/02(火)(五十嵐太郎)

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ニュー”コロニー/アイランド” 3~わたしのかなたへ~

会期:2017/03/28~2017/06/25

京阪電車なにわ橋駅 アートエリアB1[大阪府]

研究者である吉森保のコンセプトをもとに、人体内部で起きるミクロな出来事をdot architectsとアーティストのやんツーが、公園の遊具的な装置とバーチャルリアリティを体験できるゴーグルによって空間・可視化する。学際的なテーマを公園のメタファーで表現し、来場者の身体も積極的に関わることを要請する展示だった。

2017/05/02(火)(五十嵐太郎)

アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

会期:2017/04/29~2017/06/18

東京ステーションギャラリー[東京都]

正直、よくあるアール・ブリュットだと、なめていた。彼が精神病院で30年かけて描いた膨大な細密画は想像以上の内容だった。もはや宗教画に近いと言うべきか。自らを作曲家と呼んでいたが、楽譜や建築も頻出するのが興味深い。小池都知事が石原色を消すかのように、トーキョーワンダーサイトから手を引き、急にアール・ブリュットに力を入れ始めたが、アドルフならば、行政や商業に回収されるアール・ブリュットにはならないだろう。なにしろ彼は世界征服を企んでいたのだから! そして晩年の作品は、コラージュと言葉によるアートに変化している。

2017/05/02(火)(五十嵐太郎)

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