artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
スイス国立博物館
[スイス]
19世紀の様式建築である本館に対し、リベスキンド風の過激な造形による増築部分が昨年完成し、新旧の建築が対峙する。賛否両論があるようだが、日本の学生が歴史建築で何か提案すると、完全に守りに入って、新築を隠す方向にいくのと逆のデザインだ。国立博物館の常設も、ホワイトキューブではないインテリアゆえか、かなり攻めた空間展示デザインを導入していた。増築部分で開催されていた1917年のロシア革命の企画展は、冒頭と最後にアートや建築を紹介し、真ん中は歴史を振り返る。冒頭はロシア・バレエやロシア・アヴァンギャルドなどで、特にストラヴィンスキーによる「春の祭典」の自筆楽譜がカッコいい。最後はソビエトパレスのコンペなどを展示するが、反動的な一等案として有名なボリス・イオファンのオリジナル・ドローイングを見たのは初めてである。ソビエトパレス・コンペでも、ETHが所蔵するCIAMアーカイブが活用されていた。ル・コルビュジエ、ギーディオンらのメンバーが、スターリンに送った手紙であり、選ばれた一等案は、革命の精神にそぐわないのではないかという批判である。これをスターリンが実際に読んだかどうかは知らないが、おそらくザハ・ハディドも安倍首相に直談判したかったに違いない。
写真:左上=スイス国立博物館本館 左下2枚=常設展 右上から=新館、ボリス・イオファンのドローイング、ル・コルビュジエのソビエトパレス落選案
2017/05/13(土)(五十嵐太郎)
《タメディア新本社》
[スイス]
坂茂のタメディア本社ビルは、土曜のためか、結局、内部に入ることができなかったのだが、ガラスの透明建築なので、1階の空間はよく見える。ただし、木造の架構はほとんど外には露出していないので、遠目にはわかりにくい。かろうじて玄関庇の下のみ、木の構造を直接見ることができる。なお、建物全体のヴォリュームや形態は、周囲との連続性を意識したものになっている。
2017/05/13(土)(五十嵐太郎)
MAAG AREAL
[スイス]
ギゴン&ゴヤーらが関わり、ビール工場をリノベーションした本屋(ヴェルフリのレコードがあった! どんな音がするのだろう?)やギャラリーの集合体、MAAG AREALを訪れた。さすがに天井高もあって、大規模な展示空間がいくつもある。若手の紹介もいろいろあったが、ファウスト・メロッティがよかった。特に華奢な抽象彫刻やオブジェが、石上純也をほうふつさせる。
写真:左=MAAG AREAL 右=ファウスト・メロッティ
2017/05/13(土)(五十嵐太郎)
チューリッヒ芸術大学
[スイス]
さらに郊外に移動し、チューリッヒ芸術大学へ。かつて都心にあったモダニズム的な校舎から移転し、現在は工場をリノベーションした巨大な建築を使っている。中心軸上に大階段とパフォーマンスもできる大踊り場が断続的に展開し、最後は屋上に到達する。大学の構内にあるデザインミュージアムでは、企画展を2つ開催していた。ひとつがスイスに来ようというキャンペーンのための観光ポスターを集めたものである。近代以降のデザインの流れも楽しめるのだが、ロベール・マイヤールが手がけたような美しい土木の風景もしばしば使われている。もうひとつが、操り人形展だった。ダダ、アヴァンギャルド、アドルフ・アッピアとの接点など、知らないことが多く、勉強になった。
写真:左下=アドルフ・アッピア 右上=観光ポスター展 右下2枚=操り人形展
2017/05/13(土)(五十嵐太郎)
《PRIME TOWER》、フライターグ・ショップ・チューリッヒ
[スイス]
ガラス張りの彫刻のような《プライムタワー》は、チューリッヒでひときわ目立つ高層ビルである。さすがに最上階の飲食店からの眺めがよい。これもギゴン&ゴヤーが手がけたものだが、日本の場合、その都市で一番高いビルは通常、ゼネコンか大手設計組織の仕事であり、建築家が関わることはない。すぐ近くにコンテナを積んだチューリッヒ・フライターグ・ショップもある。屋台で賑わっており、映画『スワロウテイル』に出てくる円都のような舞台装置的な空間だった。
写真:下2枚=フライターグ・ショップ・チューリッヒ その他=《PRIME TOWER》
2017/05/13(土)(五十嵐太郎)