artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
未来への狼火
会期:2017/04/26~2017/07/17
太田市美術館・図書館[群馬県]
太田市美術館・図書館へ。2度目だが、図書館がオープンしてからは初の訪問である。今回は館の全体が稼働しているので、確かに2つの施設のアクティビティが相互に感じられる空間体験だった。美術の展示も、館内の図書エリアのあちこちに染み出す。開館記念展「未来への狼火」のタイトルは、太田市の清水房之丞の1930年の詩集からとったものである。3部構成になっており、最初が太田市の風土と景観を、淺井裕介、藤原泰佑、前野健太が発見する。続いて2階では、リサーチをもとに、郷土と所縁が深い、近代の絵画や工芸、石内都、片山真理らを紹介する。そして螺旋階段を上って、最後の部屋が、林勇気の映像インスタレーションで未来を描く。地域性と向きあう展示の態度は、アーツ前橋のオープニング展もほうふつさせるだろう。
写真:左下2枚=淺井裕介 右上から=藤原泰佑、片山真理、林勇気
2017/05/27(土)(五十嵐太郎)
オープンシアター2017
会期:2017/05/27
神奈川県立音楽堂[神奈川県]
神奈川県立音楽堂のオープンシアター2017へ。横浜国立大学の建築学科の学生らが館内を案内するほか、のちにいろいろと増築されたバックヤードも見学することができ、建築ファンを増やすよい機会になっている。親子や幼い子どもが多く集まったミニコンサートは、松田理奈によるヴァイオリンの独奏から始まり、曲ごとに横坂源のチェロ、加藤昌則のピアノが増えていく構成だった。それにしても、木のホールのせいか、弦楽器の響きのよいことに感心させられる。また、あちこちで子どもが泣き叫ぶなかで聴くクラシックの演奏もめずらしいというか、ある意味でシュールな体験だった。
2017/05/27(土)(五十嵐太郎)
茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術
会期:2017/03/14~2017/05/21
東京国立近代美術館[東京都]
長次郎が始めた樂茶碗の系譜を400年以上にわたってたどる展覧会だ。前半のパートが初代から14代の歴史、そして後半が15代の樂吉左衞門による作品を紹介する。日本の建築家の系譜も、このようにお家芸をたどれるが、近世から現代までの長いスパンを通じて、特定の技術と表現に関する伝統と変化を確認できるのは興味深い。個人的には、3代の道入や14代の覚入が挑戦した変革が面白い。
2017/05/21(日)(五十嵐太郎)
観世能楽堂
GINZA SIX[東京都]
2度目のGINZA SIXだが、今回は地下の観世能楽堂を見学した。松濤から移築したもので、前回と同様、鹿島建設が担当したという。客席を少し減らし、ゆったりさせつつ、正面席は増やし、全体としては細長い平面のホールになった。本舞台の屋根は天井から吊っており、多目的ホールとしての使用も想定し、隅の柱をとれるという。また非常時の備蓄や、帰宅困難者の滞在も想定しており、都心ゆえのスペックを備えている。
2017/05/19(金)(五十嵐太郎)
読売日本交響楽団 第568回定期演奏会
会期:2017/05/19
東京芸術劇場[東京都]
ロジェストヴェンスキーが指揮する超遅いテンポによるブルックナー交響曲第5番@芸術劇場。いまではあまり演奏されない、弟子が脚色した初演のシャルク版ゆえに、ただでさえ緩急の激しい曲が、笑っちゃうほどドラマティックになっている。ラストは最後尾の列にずっと座っていた金管隊がすくっと立ち上がり、沈黙を破って、大爆音のフィナーレだった。いつまでも鳴り止まない拍手を含めて、観客の反応が面白いライブである。
2017/05/19(金)(五十嵐太郎)