artscapeレビュー
神勝寺《松堂》《洸庭》
2017年03月15日号
[広島県]
福山駅から神勝寺へ。まず入り口で藤森照信が設計した《松堂》が出迎える。屋根のてっぺんに赤松をのせたテクスチャー建築であり(すなわち、テクトニックではない)、ほっこりさせる。神勝寺のエリアはかなり広く、1970年代のコンクリート寺院から古建築の移築や石山寺多宝塔の写しなどを散りばめる。
最後に名和晃平+SANDWICHによる《洸庭》を見学した。ブリッジを渡り、ダイナマイトで砕いた岩を並べた石の海原をぐるぐるまわって、ピロティで支えられた「山あいに浮かぶ舟のような建築」に到達する。屋根以外の表面がすべて杮葺きの建築であり、窓がない。下から船底を見上げる空間体験もきわめてユニークだ。そして《洸庭》の内部に驚く。ドアを抜けると、真っ暗闇で何も見えない。まるで演目「VESSEL」の冒頭のようだ。かすかな光源が揺れる水面に煌きながら、コンピュータではつくれない、複雑な映像的効果を生み出す。およそ25分のプログラムは、世界の創造のようだ。外部ではなく、内部に無限の海原を抱えた建築である。
写真:左上2枚=藤森照信《松堂》左下3枚=神勝寺敷地内、右上5枚=名和晃平+SANDWICH《洸庭》、右下=神勝寺模型
2017/02/23(木)(五十嵐太郎)