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五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

建築家・槻橋修+建築家・福屋庄子 講演会 建築と都市の未来へ向けて──「失われた街」模型復元プロジェクトに寄せて」

会期:2016/07/09

せんだいメディアテーク1階オープンスクエア[宮城県]

せんだいメディアテークで開催された東北工業大学50周年記念事業において、槻橋修の「失われた街」講演の後、堀井義博とともに対談に参加した。震災後、津波で破壊される前の街の白模型をつくるというアイデアを初めてメールで受けとったとき、まだ本当の意義はよくわかっていなかったが、これはおそらくいけると思ったことをよく覚えている。実際、その後、住民とのワークショップを通じて、全国の学生たちが制作した白模型は鮮やかな色彩を獲得し、さまざまな声が付加され、街の記憶を引き出すツールに発展した。

写真:ワークショップを経て、記憶に彩られた白模型

2016/07/09(土)(五十嵐太郎)

Noism劇的舞踊Vol.3「ラ・バヤデール─幻の国」

会期:2016/07/01~2016/07/03

KATT神奈川芸術劇場[神奈川県]

NOISM「ラ・バヤデール」@KAAT。平田オリザが参加したことによって、満州を想起させる政治的な設定が与えられたことよりも、イッセイ・ミヤケの衣装、各民族を表現する色彩、力強いカルメンに続く田根剛の空間デザイン(柱群のフォーメーションが変化することで場面の変化を表現し、最後は傾けて廃墟感を演出したり、舞台の左右でクロスする橋掛りを設けた)などの審美的な印象が残った。特に後半のアヘンによる幻想的な集団舞踏の場面が息をのむような美しさで、圧巻である。

2016/07/03(日)(五十嵐太郎)

メアリー・カサット展

会期:2016/06/25~2016/09/11

横浜美術館[神奈川県]

日本で初の展覧会ではないのだが、個人的に彼女の名前を知ったのは、20年ほど前、シカゴ万博や女性建築家論を書くために調べものをしていたときだったので感慨深い。カサットはアメリカ人の裕福な家に生まれたが、絵の勉強のために渡航して以降はほぼパリで暮らしていた。こうして作品をまとめて見ると、印象派の作風は、母子像を含む日常生活を切りとる題材とも相性がよい。また展示では、浮世絵のデザイン的な構成が彼女に与えた影響も紹介していた。

2016/07/03(日)(五十嵐太郎)

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建築倉庫

[東京都]

新しくオープンした建築倉庫@天王洲アイルは、建築模型専用の収蔵庫を開放する試みである。実際、展示空間として歩くルートの幅や鑑賞のための引きがゆったり確保されているわけではなく、保存棚の隙間を歩くような感じで、コンセプトどおりの場だった。坂茂、隈研吾、名和晃平のSANDWICHらの模型を収蔵しており、これからも量は増えていく予定だ。僕の世代だと、香山壽夫らの模型に80年代の懐かしさを感じるなど、各時代の変遷を楽しんだり、学生だと模型制作のネタとして鑑賞できるだろう。

2016/07/02(土)(五十嵐太郎)

ミケランジェロ展 ルネサンス建築の至宝/講演会 ミケランジェロの建築に見る古代との闘い

会期:2016/06/25~2016/08/28

パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]

パナソニック汐留ミュージアムに巡回したミケランジェロ展は、山梨県立美術館の会場と比べて小さいのだが、ドローイングがあまり大きくないので、むしろハコのサイズがちょうどよい。また吉野弘による会場デザインは、可動壁に小刻みなアーチの仮設壁を組み合わせたり、直交だけではなく、斜めに進んでいく空間もつくるなど、興味深い試みである。展示を監修した飛ヶ谷潤一郎のレクチャーは、ミケランジェロと古代ローマの関係について論じていた。

2016/07/02(土)(五十嵐太郎)

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