artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

野口直人 ミケランジェロ展をめぐるレクチャー

会期:2016/06/16

横浜国立大学[神奈川県]

二次元の図面では十分に表象しえない、おそらく立体的な彫刻として構想されたラウレンツィアーナ図書館の階段室をCNCルーターを駆使し、模型を製作した。古典主義からSANAA、ゲーリーにも議論が及び、建築家と歴史家が共通に語れる貴重な場だった。また会場の壁に向かって、1/1のスケールでCGの透視図を投影し、巨大なサイズであることも確認した。

2016/06/16(木)(五十嵐太郎)

あわれ彼女は娼婦

会期:2016/06/08~2016/06/26

新国立劇場 中劇場[東京都]

栗山民也の演出による17世紀の戯曲「あわれ彼女は娼婦」@新国立劇場。アナベラ(蒼井優)と兄(浦井健治)の近親相姦がもたらす悲劇と狂気の作品である。脇役それぞれの愛憎の物語も、これに絡んでいく。壊れた額縁の向こうの舞台の床に、傾いた巨大な赤い十字架がセットとして設えられ、それが全場面を通じて効果的に用いられる。シンプルだが、シンボリックな舞台美術。これは上階の席の方がよく見えるかもしれない。

2016/06/16(木)(五十嵐太郎)

ポンピドゥー・センター傑作展 ─ピカソ、マティス、デュシャンからリクエストまで─

会期:2016/06/11~2016/09/22

東京都美術館[東京都]

コレクションの対象となる1906年から開館の1977年まで、終戦の1945年をのぞいて、各年ごとに一作品を紹介する。日本の美術館とは異なり、建築やデザインの部門もあることから、当たり前のように建築のジャンルも入っているのだが、1923年の《オルリーの飛行船格納庫》の8分の建設映像が素晴らしい。確か『近代建築史図集』で覚えた建築だが、こんなに凄かったとは! アートはフランスを中心に組み立てたこともあり、アール・ブリュット系など知らない作家を学ぶことができた。展示のラストは、ゴードン・マッタ=クラークによる美術館建設に伴い、解体される建築に円をくり抜く作品からレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースが設計したポンピドーセンターそのものへの流れだが、建築を説明するキャプションの文がよくない。これでは単に風変わりな建築としか伝わらない。

2016/06/15(水)(五十嵐太郎)

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竹中工務店400年の夢 ─時をきざむ建築の文化史─

会期:2016/04/23~2016/06/19

世田谷美術館[東京都]

近世の社寺建築から近現代の仕事までを一気に紹介する好企画である。やはり、国立劇場や二国のコンペに勝利したことは大きな扱いになっていた。図面や模型、1964年に創刊した竹中の季刊誌『approach』の全バックナンバーのほか、竣工当時のパンフ、美術館らしく建物と関連する絵画作品も含む、濃密な内容が楽しめる。が、詰め込みすぎになった展示デザインはやや粗い。また最後のメディアアート風のインスタレーションは全然いただけない。

2016/06/11(日)(五十嵐太郎)

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海と住む──台湾東部の海岸線にデザインされた住宅建築をめぐって

会期:2016/06/10

台北駐日経済文化代表処台湾文化センター[東京都]

陳冠華「海と住む──台湾東部の海岸線にデザインされた住宅建築をめぐって」@台湾文化センター。レクチャーでは、時間を刻み込むブルータルなコンクリートによる一連の住宅が紹介された。なるほど、彼の作品集も、通常の建築家とは違い、竣工写真ではなく、すでにツタに覆われ、廃墟にも見えるような状態の写真ばかりを掲載している。非都市の風景を強烈に際立たせる批判的地域主義的なデザインである。が、室内から大きな窓で海を望む操作は意外になく、屋外に出て、海を見る感じだ。

2016/06/10(金)(五十嵐太郎)