artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

シン・ゴジラ

『シン・ゴジラ』は、1954年に初めてゴジラが登場した第1作の恐怖と崇高性を蘇らせた傑作である。津波破壊と原発事故後の想像力、安全保障をめぐる国内外の政治ドラマ、緩急の差が激しい動きと静止した立像、おそらく経済的な理由によるものだが、うんざりするほど続くスペクタクルではない限定的かつ効果的な見せ場などが印象的だった。特に自衛隊の攻撃には反応せず、アメリカ軍の攻撃で逆鱗に触れて、東京の高層ビルだけが集中的に破壊される深夜のシーンが美しい。これは家族や恋人の個人の物語に収束させない、現代日本の新しい怪獣映画である。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

ジブリの立体建造物展 関連プログラム 対談「藤森照信×杉戸洋」

会期:2016/07/31

豊田市美術館[愛知県]

藤森照信×杉戸洋/五十嵐によるジブリのトーク。意外な組み合わせだが、3名ともあいちトリエンナーレ2013組で、いわば同窓会である。杉戸さんは、実は東京でジブリ展を二度見ており、今回の展示でも意識したという。藤森さんとモノづくりのこだわりについて語った。ともに人の記憶に訴えながら、ジブリは絵を動かし、杉戸さんは空間を揺らし、animateするという共通点も感じられた。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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杉戸洋 ─こっぱとあまつぶ

会期:2016/07/15~2016/09/25

豊田市美術館[愛知県]

杉戸洋「こっぱとあまつぶ」展は、あいちトリエンナーレ2013の名古屋市美術館と同様、通常の順路と真逆のルートを設定することによって、親密な小部屋から始まる。また紫やピンクの床カーペットとトップライトが空間に独特の色味を与え、ただ絵が並ぶだけではない展示が楽しめる。後半は触ると動く青木淳のぼよよん小屋や家具、スタジオ・ヴェロシティのフラジャイルなインスタレーションが絡まり、空間に揺らぎを与える。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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ジブリの立体建造物展

会期:2016/07/15~2016/09/25

豊田市美術館[愛知県]

豊田市美へ。「ジブリの立体建造物」展は超激混みだった。東京での展示を見逃したが、韓国への巡回などを経て、コンテンツは増えているらしい。アニメの展示にありがちな動画は一切使わず、背景画となる建築に焦点を当て、そのデザインや時代背景についての藤森照信の解説をキャプションで付す。だが、おそらく来場者は空間の絵を見て、脳内で映像を再生していたはずだ。アート作品に比べて、絵の数が多く、サイズが小さいことから、大空間を小分けの部屋の連鎖に変え、8つのゾーンで展開する。圧巻は油屋の巨大模型だった。ほかにもハイジやポニョの模型もあり、竹中大工道具館も協力している。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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建築学生ワークショップ明日香村2016 提案作品講評会

会期:2016/07/30~2016/07/31

明日香村国営飛鳥歴史公園内キトラ古墳周辺[奈良県]

建築学生ワークショップ明日香村の中間講評会@四神の館へ。飛鳥を訪れるのは、修学旅行以来かもしれない。キトラ古墳正面を敷地とするプログラムで、構造デザインや施工を助けるサポート体制など、よく練られている。が、8組の案はどれもキトラとの対峙を避け、サイトスペシフィックでない野外彫刻風が多く、せっかくの場所なのにもったいない。古墳の初期は巨大で外からの見えを重視したが、末期は小型化し、内部に意識が向かい、キトラも実物は拍子抜けするほど小さい。が、四神や天文の壁画で知られるように、これはいわば洗練されたインテリア・デザインの登場である。そういう空間史的な意味も、ほとんど学生の案に影響していなかったのは残念だった。

写真:左=上から、《四神の館》、ワークショップ敷地、《キトラ古墳》 右=上から、《キトラ古墳》模型、ワークショップ模型

2016/07/30(土)(五十嵐太郎)