artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

森田一弥リノベーション

[京都府]

《Gの別宅》近くの山崎泰寛、井口夏実の家を訪問する。これは森田一弥による古い家のリノベーションである。一階は玄関からいきなりベッドが見えて驚くのだが、寝室や書斎とする。次に2階のリビングとキッチンを体験し、この構成を納得する。周辺家屋が近接するなかで、2階ならば開放的な見通しを確保できるからだ。斜面になった背後は、天皇陵が目の前である。必要な強度は確保しつつも、屋根や壁などはフル補修ではなく、今度も続くリノベーションの過程としての住まいだった。

写真:左列・左上=山崎泰寛・井口夏実の家、天皇陵

2016/07/23(土)(五十嵐太郎)

《Gの別宅》

[京都府]

竣工:2015年

銀閣寺近くのGの別宅を見学する。木村松本+田所克庸+加藤正基の設計、伊藤智寿らの施工による連棟長屋住宅のリノベーションである。路地奥の長屋の一部、細長い小空間に常滑の水野製陶園の煉瓦を積んだ段々の壁が挿入され、圧倒的な存在感をもつ。煉瓦の壁は、隣との遮音のほか、段差や隙間のある積み方によって、小物置きとしても機能する。床は三和土。合板の二階は別世界だが、小さな吹抜けで上下をつなぐ。そして奥は減築によってテラスを生む。

2016/07/23(土)(五十嵐太郎)

アンテルーム増床リニューアルオープン&「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」

会期:2016/07/22

ホテルアンテルーム京都[京都府]

ホテルアンテルーム京都の増床リニュアルのオープンへ。UDSの企画設計と名和晃平が率いるSANDWICHのアートディレクションにより、代ゼミの学生寮がアートのある客室に変化した。1階は名和晃平、蜷川実花らの庭付きコンセプトルーム。6階は金氏徹平、ヤノベケンジ、宮永愛子らのコンセプトフロア。そして2~5階は若手作家のスペース。作品を買い取って、部屋に固定化するのではなく、むしろ365日アートフェアを掲げ、宿泊した人が作品を購入でき、それにより作品も入れ替わる。一方、アーティストにとっては貸画廊とは違う、発表の場として機能する。せっかくアンテルームでのトークなので、名和さん一推しの若手、木村舜が制作した感情・行動(笑い、食べるなど)やキャラ(社畜)に基づく歪んだ人体のドローイングと彫刻がある、1階の庭付きの部屋に泊まる。夜は庭の彫刻の頭がぐるぐると光って、なかなかに不気味。ヒバ材による楕円のバスタブは使って水を吸うと香りを放つ。

写真:左=上から、名和晃平、蜷川実花、金氏徹平 右=上から、ヤノベケンジ、宮永愛子、木村舜

2016/07/22(金)(五十嵐太郎)

手塚建築研究所《あさひ幼稚園》ほか

[宮城県]

竣工:2012年

南三陸では、手塚建築研究所による《あさひ幼稚園》を探した。移築だろうか、復興ニュータウンの入口にあたる高い場所に建つ。そして久しぶりに防災庁舎に向かうと、場所がわからない。ここも巨大なマスタバ群で完全な異世界に変貌している。ようやく土の山のあいだにちょこんと残る目的地を発見したが、被災後に風景があまりに変わったことに改めて衝撃を受ける。

写真:上から、《あさひ幼稚園》、防災庁舎

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)

陶器浩一、大西麻貴+百田有希/o+h、永井拓生、高橋工業《さとうみステーション》ほか

[宮城県]

竣工:2013年

大西麻貴+百田有希の《さとうみステーション》へ。大胆な曲線が立面に展開し、道路からもすぐにわかる強い視認性をもった形態である。こちらも日曜で休みだったが、内部はよく見える。6mmの鋼板を曲げた大小のアーチを複数組み合わせながら、建築空間をつくる。手すりなどの細部はかわいらしい。構造は陶器浩一、施工は被災した気仙沼の高橋工業である。すぐ近くには、チャオ・ヤン、妹島和世、渡瀬正記らによる気仙沼大谷のみんなの家と、陶器浩一研による竹や土を使った《竹の会所》が建てられていた。いずれも海に面しており、よく使われているようだった。くまもとアートポリスのように建築家物件が点在するが、3.11後の被災地は小さく明快でシンプルな作品が多く、必ずしも公共建築ではなく、独自にファンドレイジングしているケースも少なくない。

写真:左上2枚=《さとうみステーション》 左下・右上=《気仙沼大谷のみんなの家》 右中上=《浜の会所》 右下2枚=《竹の会所》

2016/07/17(日)(五十嵐太郎)