artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ビルディングモデル展
会期:2016/08/05~2016/08/22
ASJ TOKYO CELL[東京都]
会場は国際フォーラム向かいの路面であり、抜群のロケーションだ。遠藤さんが手がけた建築作品から30の模型と世界各地で収集したミニチュア群が一堂に会する。背後にパネル写真が一点あるものの、主に金属系の素材によって制作されたコンセプト模型には、説明文や施設名称を一切つけず、素材と建築の基本形式だけをストレートに伝える潔い展示である。
2016/08/05(金)(五十嵐太郎)
ギメ・ルーム開設記念展「驚異の小部屋」ほか
会期:2015/10/02
インターメディアテク[東京都]
久しぶりにインターメディアテクに立ち寄る。「雲の伯爵」や「帝大造船学」の展示、ギメ・ルーム開設記念展「驚異の小部屋」などを開催中だが、通常の真面目でお堅い博物館的な見せ方を変え、卓抜したセンスによって、アートやデザインを組み込む。細かく見ていくと、フェイクの古びたキャプション、背後のパネルとズレたフレーム、ランダム風の配置、高所の図面などの工夫に、ニヤリとさせられる。
2016/08/05(金)(五十嵐太郎)
竹岡雄二 台座から空間へ
会期:2016/07/09~2016/09/04
埼玉県立近代美術館[埼玉県]
国立国際美術館でも見た展覧会の巡回だが、ハコが変わると、だいぶ印象が異なる。ここでは点数やドローイングが増え、部屋では可動間仕切りを使わず、そのままの大空間をゆったりと活用し、ミニマリズム的な造形群によって黒川紀章の建築と積極的に対話している。また遠山記念館の卓や文台など、古い調度品も特別出品され、新旧の呼応を生む。
2016/08/05(金)(五十嵐太郎)
ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~
会期:2016/07/24~2016/08/21
本多劇場[東京都]
KERAと古田新太が組んだ「ヒトラー、最後の20000年」を観劇。政治的な風刺というより、いやユダヤ人のネタを含めて、あまりに不謹慎でさえあるが、内容を説明しようにも、最初から最後まであまりに支離滅裂で、サブタイトルが示唆するように「ほとんど、何もない」。が、最後まで飽きさせず、笑いを誘う破壊力を放つ。見事な演技と脚本である。演劇でしか表現できない間の絶妙さも鍵なのだろう。
2016/08/04(木)(五十嵐太郎)
シン・ゴジラ
『シン・ゴジラ』は、1954年に発表されたシリーズ第1作の恐怖と崇高性を蘇らせた傑作である。特に自衛隊の迎撃にはただ歩き続けるだけだったゴジラが、米軍の攻撃には激昂し、停電になった闇の東京を焼くつくし、超高層ビルを切り裂き、やがて停止する、庵野秀明節の絶望的なまでに美しいシーン。これは日本映画史に残る。現代日本で再生した新しい怪獣映画は、津波破壊と原発事故後の想像力、安全保障をめぐる国内外の政治ドラマ、緩慢な動きと静止した立像に加え、うんざりするほど続くスペクタクルではない、限定的かつ効果的な見せ場が効いている。また、この手のジャンルにありがちな家族や恋人の個人の物語に収束させないこともよかった。
2016/08/01(月)(五十嵐太郎)