artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
岩手県各所
[岩手県]
竣工:2012年
岩手県をまわる。各地の仮設住居や仮設商店街では、かなり役割を終え、空きが目立つところも散見される。久しぶりの田老町を訪れた。かつて街だったところに野球場が建ち、なるほど防潮堤の描くカーブに輪郭がうまく沿ってはいるが、以前は建物が建っていたことを知っていると、かなりシュールな風景だ。隣に立命館大の宗本研によるサッカーボール型の《ODENSE》が建つ。また近くでコンビニを建設中だった。そして海に散らばっていた、破壊された防潮堤のコンクリートの塊は消えている。建築としては柵に囲まれたたろう観光ホテルだけが震災遺構として、被災の痕跡を示す。もっとも、どこをどう補強して、公開しているのかが、わかりにくい。なお、近くの漁業協同組合に見覚えがあり、2011年に撮った写真を調べると、そのときと同じものが存在していた。つまり、あの津波に耐え、現在普通に使われているのだ。すごいと思うのだが、全然知られていないように思う。
写真:左=上から、仮設商店街、野球場、たろう観光ホテル 右=上から、《ODENSE》、漁業協同組合
2016/07/16(土)(五十嵐太郎)
インデペンデンス・デイ:リサージェンス
20年後の「インデペンデンス・デイ」を見る。想定どおりに物語はバカで、ダサいデザインのエイリアンも、中枢の一撃で全隊が敗北する虫モデルの組織も相変わらずだ。しかしながら、3DのIMAXで映像の迫力を体験できることには十分な価値がある。重力の操作によって上げて落とすという単純な攻撃だが、なるほど破壊力は凄まじい。ハリケーンが通過した後のような破壊は見所である。最近のハリウッド映画のさまざまな作品の続編において、中国の存在感が目立つのは、本作も例外ではなかった。
2016/07/13(水)(五十嵐太郎)
太陽
入江悠監督の映画『太陽』を見る。イキウメによる同名の演劇とおおむね同じプロットだが、入江版の方がオラアこんな村イヤだ! 感が強い。すなわち、旧人類であるキュリオ側の少年が中心になっている。なお、地方の問題は、入江がこれまでの作品でも描いたモチーフであり、それが今回はSF仕立てに変換されている。またイキウメ版の方が、新人類ノクス側も昼の旧人類の行動や考えに触れて、合理的な夜の世界に疑問を抱く。そしてラストは入江版の方が救いというか、共生への希望を感じさせる。
2016/07/12(火)(五十嵐太郎)
FAKE
森達也のドキュメンタリー映画『FAKE』を見る。悪者にされた佐村河内の側から社会の反応を見ることは、オウム真理教を題材にした『A』と同様だが、この作品は夫婦の関係に焦点をあてつつ、かといって彼らが正しいと主張するわけでもなく、最後まで何が真実で、何を信じてよいかを宙吊りにして問いかける。そして音楽が本当に好きなの? という森の言葉に応じて、佐村河内が見せる衝撃の終盤のシーンをどう解釈すべきかが突きつけられる。単純に白黒つけて、面白おかしくすることだけを優先する日本メディアのまずさを改めて認識する。
2016/07/10(日)(五十嵐太郎)
enra単独公演PROXIMA仙台公演
会期:2016/07/10
電力ホール[宮城県]
各メンバーがそれぞれに専門をもち、コマ回し、バレエ、新体操、武術、パントマイムなどを担当し、背後のCG映像と連動しながら、複合的なダンスを行なう。エンターテイメントとしては十分楽しめるが、最先端ではない(先端風だけど)。あまりにも内容が断片化されすぎていることや、大きい舞台であっても、結局は彼らの動きが小さいスクリーンに縛られすぎていることが気になった。
2016/07/10(日)(五十嵐太郎)