artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ロベール・ルパージュ「887」(日本初演)
会期:2016/06/23~2016/06/26
東京芸術劇場プレイハウス[東京都]
現代詩の困難な暗唱を経験したことを契機に、逆に忘れがたい個人の記憶を辿り始める。劇中、記憶の宮殿に言及したように、映像を駆使しつつ、舞台装置が回転・変形しながら、過去のアパート、部屋、風景が次々と現われ、場所とともにそれぞれの思い出が蘇る。ギミックたっぷりの技巧にも驚かされるが、圧巻のひとり芝居だった。
2016/06/26(日)(五十嵐太郎)
日伊国交樹立150周年記念 世界遺産 ポンペイの壁画展
会期:2016/04/29~2016/07/03
森アーツセンターギャラリー[東京都]
今年は日伊交流150周年ということで、イタリア関連の展覧会が目白押しだ。作品数は決して多くなかったが、単純な第一から線が異様に細い第三様式、そして複合系の第四様式の推移がわかる建築画やエルコラーノの優れた人物画などが展示されていた。第二様式は、近景と遠景にラフな透視図、中景に軸測投影が混ざる興味深い空間の表現である。森タワーのエレベータを降りると、今度はカオス*ラウンジによる東京の場所の記憶を扱う風景地獄展が待ち受けていた。
2016/06/26(日)(五十嵐太郎)
平面を超える絵画:インスタレーションと日本画的感性
会期:2016/05/23~2016/08/10、20、21
特別講義のために、武蔵野美大を訪れ、大学の美術館に寄る。こういう施設がキャンパス内にあるのはうらやましい。「所蔵品展」や「平面を超える絵画:インスタレーションと日本画的感性」を見る。後者は日本画を学んだ後、空間をつくる出月秀明、栗林隆、吉賀あさみらが出品している。栗林はあいだを歩くことができる大きな二枚の壁を吊り下げ、出月は三角フレームとまわる巨大プロペラを制作し、なるほど、二次元を超えた展開をしていた。
写真:上=栗林隆 下=出月秀明、吉賀あさみ
2016/06/24(金)(五十嵐太郎)
土木展
会期:2016/06/24~2016/09/25
21_21 DESIGN SIGHT[東京都]
21_21にて、「土木展」のオープニングに顔を出す。過去に前例がない企画なので、てっきりカッコいい、土木デザインの事例を紹介する作品主義だと思い込んでいたが、いい意味で裏切られた。これは楽しいドボクの展覧会だった。インタラクティブなインスタレーションなどを通じて、土木の世界を知る仕掛けの数々。また会場に置かれていた土木系カルチャーを扱う『ブルーズ・マガジン』も衝撃である。
2016/06/23(木)(五十嵐太郎)
武智和臣/Atelier A+A《オーベルジュ内子》
[愛媛県]
竣工:2009年
最後は日土小の保存活動に尽力した武智和臣が設計した《オーベルジュ内子》を見学する。土を盛って緑豊かなランドスケープをつくり、その奥で平家木造の宿が出迎える。眺めや和蝋燭の明かりを楽しむダイニングだ。分棟になった別荘のような客室群は、日が暮れると、内側から和紙越しに行灯のごとく光る。
2016/06/20(月)(五十嵐太郎)