artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
オペラ「金閣寺」
会期:2015/12/05~2016/12/06
神奈川県民ホール[神奈川県]
田尾下哲演出、三島由紀夫原作のオペラ「金閣寺」@神奈川県民ホール。あいちトリエンナーレ2013で試みた「蝶々夫人」の日本的な空間と所作を踏襲しつつ、象徴的な建築の美を効果的に見せる。下野竜也の指揮により、リズムが強く、キャラも表現する黛敏郎の現代音楽が刻まれ、それに伴い、空間が動く。黒光りする床に水面のように反射する金閣寺。変形し、動くスクリーン、フレームの彼方にちらり見える金閣寺、台風と稲妻に襲われる金閣寺、内部から炎上する金閣寺。通常のオペラと違い、華となるメインの女性の登場人物がいない分、主人公の溝口が対峙する建築が主役級の扱いになっていた。
2015/12/05(土)(五十嵐太郎)
NISSAN ART AWARD 2015 ファイナリスト7名による新作展
会期:2015/11/14~2016/12/27
BankART Studio NYK 2F[神奈川県]
旬のアーティストの新作をまとめて楽しめる。グランプリに選ばれた毛利悠子は、漏水する地下鉄のブリコラージュ的な対処を観察するモレモレ東京のリサーチを発展させた水循環器械だった。オーディエンス賞になった久門剛史は、不思議な記憶の空間をつくり上げた。
写真:上=毛利悠子《モレモレ:与えられた落水 #1-3》、下=久門剛史《Quantize #5》
2015/12/05(土)(五十嵐太郎)
第1回デダロ・ミノッセ建築賞 日本巡回展
会期:2015/11/27~2016/12/13
ASJ YOKOHAMA CELL[神奈川県]
横浜ランドマークタワーのASJ/アーキテクツ・スタジオ・ジャパンへ。デダロ・ミノッセ建築賞の日本巡回展を開催していた。ヴィチェンツァで1997年にスタートした国際建築賞らしい。同スペースには、建築関係の図書、模型、建築家ファイルなどがある。また上階に位置しているので、みなとみらいエリアへの眺めもなかなかいい。
2015/12/05(土)(五十嵐太郎)
ローラン・グラッソ展「Soleil Noir」
会期:2015/11/11~2016/01/31
メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]
屏風形式の壁を幾度も反復しつつ、「黒い太陽」をテーマに擬古典的な手法で制作された作品を並べ、超越的な現象と接触したイタリア(ローマ万博の会場予定地だったEURなど)や日本の偽史を演出する。またドローンによる非人間的な視線の動きで撮影されたポンペイの映像がおそろしく美しい。なお、1階の入口のショー・ウィンドウでは、大西麻貴+百田有希の作品が設置されていた。
写真:大西麻貴+百田有希
2015/12/02(水)(五十嵐太郎)
小沢剛 展 帰って来たペインターF
会期:2015/10/23~2016/12/27
資生堂ギャラリー[東京都]
Fは藤田嗣治を暗示するイニシャルだが、パリならぬバリで地元と交流した架空の従軍画家の物語を展開させている。絵そのものを藤田と比較すると、どうしても弱いが、インドネシアの歴史家、画家、音楽家と共同で調査・制作し、音楽付きの映像作品を生み出したことが成果だろう。
2015/12/02(水)(五十嵐太郎)