artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

横浜発 おもしろい画家 中島清之─日本画の迷宮

会期:2015/11/03~2016/01/11

横浜美術館[神奈川県]

若い時に関東大震災後の横浜風景なども描いた画家である。日本画ながら、戦後はアンフォルメルに影響を受けたり、抽象や幾何学も試したり、ちあきなおみを題材にするなど、さまざまな方法をどん欲に探求した。また建築の絵は歪んだ線が特徴である。ほかにカプリッチョ風の銀座の描写も興味深い。横浜美術館の常設では、写真セクションにおいて、コムデギャルソン/川久保玲が1980年代から90年頃までに手がけた椅子や家具と、店舗で紹介してきた中平卓馬や清野賀子らの写真を一緒に展示している。貴重な企画だ。やはり、椅子にも独特のデザインのセンスが光る。その椅子に座ることができるコーナーも設けられていた。

2015/11/29(日)(五十嵐太郎)

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土木デザイン競技「景観開花。2015『活かす』」公開最終審査会

会期:2015/11/28

東北大学 青葉山キャンパス[宮城県]

「景観開花。2015」の公開審査。一次審査はこれまでになく票が割れたのに、プレゼを経た最終の投票では全員一致でトップ2が決定した。千葉の山を削って東京の建築がつくられたのをリバースし、解体して山を復元する三田恭裕・鈴木寛人が最優秀に選ばれた。そして縁石を活かすユニークな視点の富山大学チームが優秀賞となった。審査後は、八馬智と「まちの見方・歩き方~ドボクに驚き、ケンチクに惚れる~」のトークセッションを行なう。彼が用意したパリやオランダの建築と土木、あるいはヨーロッパの産業遺産やリノベーション事例を映し出しながら、なぜやんちゃなデザインが出てくるのか、逆になぜ残して活用するのかなどを語る。

2015/11/28(土)(五十嵐太郎)

ギャラリートーク in「空気展 -what is “kuuki” in Architecture? 若手建築家5名による展覧会

会期:2015/11/27

東北大学 人間・環境系研究棟1Fギャラリー[宮城県]

東北大学にて、ギャラリー・間の展覧会に出品している中国人建築家チャオ・ヤンと空気展のメンバーとのギャラリートークを行なう。前半は、同じくU-35の世代である日本の若手建築家が作品を説明し、コメントのやりとり、後半は逆に中国の建築や土地の状況についても質問がなされ、相互に意見交換を行なう。続いて「アジアの日常から」展の関連企画として、チャオ・ヤンの講演会「Rural Intervention」が開催された。大都市ではなく、あえて地域で活動することで、テクトニックなアプローチからディテールも決めるデザインである。細かい環境の読み取りや使い手とのやりとりは、日本の建築とも共通していた。

2015/11/27(金)(五十嵐太郎)

村上隆の五百羅漢図 展

会期:2015/10/31~2016/03/06

森美術館[東京都]

国内では久しぶりの個展である。和のポストモダン+アニメ絵+デジタルによる近年の作品群が一堂に会する。圧巻は、やはり震災を契機に集団制作された全長100mに及ぶ五百羅漢図だった。実はあいちトリエンナーレ2013の目玉にできないかと少し検討もしていたが、どうしてもカタールで現物を見る時間がとれず、また愛知で十分な展示場所も確保できないことから見送っていた。

2015/11/26(木)(五十嵐太郎)

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アイデアコンペ第二次審査「太陽の塔に対峙せよ!」

会期:2015/11/26

岡本太郎記念館[東京都]

岡本太郎記念館にて、椹木野衣、藤本壮介、平野暁臣、五十嵐による「太陽の塔に対峙せよ!」コンペの公開審査を行なう。ファイナリスト7名のプレゼと質疑応答を経て、最優秀を決定する。建築の審査も、アートの審査も経験したが、その両者が混じったあまりないタイプの場になった。建築サイドはやや固めだったが、それを突抜け、詳細図や構造解析まで提示し、逆に異様さを引き出す、社会人が休みに集まった山田文宏チームの「体漂の塔」が最優秀に選ばれた。この案は命がけで体漂の塔内を登り、手足と顔を壁の外に出して、むき出しの身体で太陽の塔と向き合う。応募案では意外と少ない直球勝負である。特別賞は、塔をバイオマス発電所化する万博公園牧場化計画の大坪良樹となった。ほかに気になったものは以下のとおり。宮崎宏康のパーフェクト・エコーは、太陽の塔が宇宙に浮かび、それを半径340mの球体で包む。中心から叫び、すべての音がやまびこで跳ね返ると、爆発が起きるかもしれない。そして中村宏大による太陽の塔がゲロを吐く。涙を流しながら、消化不良をおこした太陽の塔がソーダを噴出するというもの。
写真:手前=《体漂の塔》、奥=《樹形夢─万博公園牧場化計画─》

2015/11/26(木)(五十嵐太郎)