artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

ヨーゼフ・パウル・クライフス《シカゴ現代美術館》ほか

[アメリカ、シカゴ]

竣工:1996年

立方体を反復するパウル・クライフスの《シカゴ現代美術館》へ。開催中のPOP ART DESIGN展は、美術だけではなく、ヴェンチューリ、スミッソン、イームズ、ソットサス、ホラインほかなどの建築デザインも紹介していた。またマーク・リー、ジャワルスカなどの展示は、シカゴ・ビエンナーレ国際建築展との連携企画である。近くのウォーター・タワー・ギャラリーでも、エヴロンを紹介する連携展示だった。

写真:上から=クライフス《シカゴ現代美術館》、《ウォータータワー・ギャラリー》、エヴロン

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

ミース・ファン・デル・ローエ《レイクショア・ドライブ・アパートメント》

[アメリカ、シカゴ]

竣工:1951年

すぐ隣にやはりミースらがかかわった一見そっくりな二棟の建築もあるのだが、傑作と比較できて興味深い。比例や細部のどこが違うと、ヘンになるかがわかるからだ。またここから彼の弟子が手がけた《レイク・ポイント・タワー》も見える。この建物は、ミースの湾曲するガラス高層のオマージュだった。

写真:左上・左中=ミース《860-880レイクショア・ドライブ・アパートメント》(1951)、右上=《900-910レイクショア・ドライブ・アパートメント》(1956)、右中=《レイク・ポイント・タワー》、《ジョン・ハンコック・タワー》からレイク・ショアの眺め

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

イリノイ工科大学

[アメリカ、シカゴ]

三度目のイリノイ工科大学へ。今回は冬休みのために、ミースの建築群、OMAのキャンパスセンター、SOMやヘルムート・ヤーンらによる各施設は軒並み閉鎖していた。ミース最初のアメリカ建築となる研究施設(1943)は、戦時下にI形鋼を使用している。一方、日本は鉄を使う建築の現場を中止しており、これでは戦争に負けるわけだ。均質なデザインの建物が何の施設かわからないというチャールズ・ジェンクスの嫌みを思い出しながら、キャンパスをまわる。メンテナンスがされているからだろうが、特に建築学部棟は60年前に建てられたとは思えないほど、格別に美しい。周囲を映し込むリフレクションも印象的である。ところで、雪景色のキャンパスにシーガルの屋外彫刻があって、遠くから眺めると、ベンチに座る真白な人間は凍死かと思った。

写真:左=上から、ヤーン「イリノイ工科大学」、イリノイ州センター、チャペル、ミース《建築学部棟》 右=イリノイ州センター、ミース《研究施設》、レム・コールハース《マコーミック・トリビューン・キャンパス・センター》、シーガル

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

シカゴ川の両岸 高層建築群

[アメリカ、シカゴ]

冬のシカゴは日没が早いので、早朝に街歩きを行なう。シカゴ川の両岸に並ぶ、近現代の高層建築群は壮観である。国際コンペでモダニズムが敗退し、ゴシック様式が選ばれた《シカゴ・トリビューン》、ミース最後の《IBMビル》、リカルド・ボフィルのポストモダン、コンピュータ時代のぐにゃぐにゃビルの《アクア・タワー》など、景観的な統一性がなくても、時代の層を重ねた都市の姿は素晴らしい。

写真:左上=《シカゴ・トリビューン》、左中・左下=《IBMビル》、右上=ボフィル《Donnelley Building》、右下=《アクア・タワー》

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

シカゴ・ビエンナーレ国際建築展

会期:2015/10/01~2016/01/03

シカゴ文化センターほか[アメリカ、シカゴ]

2015年から始まった第一回シカゴ・ビエンナーレ国際建築展が、今回のシカゴ訪問の目的である。以前この企画の学芸員が、あいちトリエンナーレ2013の視察に来ており、シカゴで建築ビエンナーレを準備中と述べていたが、無事、実現したわけだ。まずはメイン会場のシカゴ文化センター(1897)へ。世界の若手建築家が参加し、1/1のインスタレーション(VO TRONG NGHIA、MOS、ALBORIほか)、家具(RAAAF、KÉRÉ ARCHITECTURE、PEDRO&JUANAほか)、模型、ドローイング、イワン・バーンの写真、シカゴ改造計画(PLAN Bほか)、リサーチ、サラセノのアートなど、さまざまな表現が展開する。印象に残ったのは、パキスタンのベアフット・アーキテクチャーによる震災後のシェルター住居や、ラカトン&ヴァッサルによる集合住宅リノベーションなど、社会性の強いプロジェクトだった。日本からは、アトリエ・ワンによるポップ・ピラネージ的なインスタレーション、藤本壮介の「これも建築だ!」の模型群、石上純也によるKAITのプロジェクト、大西麻貴+百田有希による《Children's Town》が出品されていた。

写真:左=上から、シカゴ文化センター、PEDRO&JUANA、イワン・バーン、MOS 右=上から、ベアフット・アーキテクチャー、アトリエ・ワン、藤本壮介、大西麻貴+百田有希

2015/12/28(月)(五十嵐太郎)