artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
フェスティバル/トーキョー15 岡田利規「God Bless Baseball」
会期:2015/11/19~2015/11/29
あうるすぽっと[東京都]
フェスティバルトーキョーのプログラムで、岡田利規「God Bless Baseball」@あうるすぽっとを観劇した。韓国人と日本人の男女が、野球について考えるのだが、二カ国語に加え、核の傘をつくるアメリカから発せられる英語が入り乱れる。野球という共通して人気があるスポーツを通じて、二国とアメリカの関係を考察する仕掛けだ。作品タイトルは高嶺格の作品に影響されたらしく、舞台美術でも彼に参加してもらっている。四人の非自己的運動から、水しぶきを上げる終盤へのカタルシスが爽快だった。
2015/11/19(木)(五十嵐太郎)
空気展 -what is “kuuki” in Architecture? 若手建築家5名による展覧会
会期:2015/11/17~2015/11/28
東北大学の人間環境棟で、若手建築家5人の「空気」展がスタートした。2014年のU-35に参加していた伊藤友紀、植村遥、魚谷剛紀、長谷川欣則、細海拓也が、小さな模型群を並べたプリズミックギャラリーとは違う展示を行ない、巡回展というよりも、新しい展示として再構成された。当初は小さな模型だけ送ってもらい、既存の台に置いてもらうつもりだったが、実際は展示のための什器からつくり込み、想像以上に力の入った内容となった。1階のトンチクギャラリーも、ちゃんとした展示を行なうと、これまでになくよい空間に見える。初日のトークでは、翻訳不能な「空気」の概念(それがゆえに、かつての「間」展のように展開しうるのでは?)、ミックスした展示形式などを討議する。
2015/11/17(火)(五十嵐太郎)
海街diary
行き帰りの飛行機では、7本の映画を見る。ベストは「海街diary」だった。こんな四姉妹はいないだろうと突っ込みたくなるが、それを上回る実在感が、細部の描写によって丁寧につくり込まれている。欠けた父の記憶を共有しつつ、味や家屋や作法を継承していく彼女たち。広瀬すずも、この瞬間にしかできない役と演技である。
2015/11/15(日)(五十嵐太郎)
UW-JSPS Joint Symposium:Socially Engaged Art in Japan NARRATIVE AND PANELS 日本における社会に関わるアート:現代美術と政策への問い
会期:2015/11/12~2015/11/14
ワシントン大学[アメリカ合衆国、ワシントン]
シアトルのワシントン大学でのシンポジウム「Socially Engaged Art」は、3日間朝から夜まで濃密なプログラムだった。そもそもタイトルの概念とは? 日本におけるその展開、具体的な実践例の紹介、ポスト3.11などが議論された。途中、ロサンゼルス在住の田中功起のトークや、シアトルに滞在している加藤翼の作品紹介も交える。
筆者は3.11を扱う最後のセクションで、金沢21世紀美術館から水戸芸術館に巡回した「3.11以後の建築」展と、ザハの新国立競技場問題を軸に「リレーショナル・アーキテクチャー」について発表する。Marilyn Ivyから従来の美学的な建築と新しい社会的な建築は対立するものなのかと聞かれ、両者は重層しうると回答した。
2015/11/14(土)(五十嵐太郎)
《シアトル美術館》
[アメリカ合衆国、ワシントン]
竣工:1991年
ヴェンチューリらが設計した《シアトル美術館》にて、シンポジウムのメンバーと合流し、案内をしてもらいながら、アートを取り込んだ水辺の再開発計画を見学する。市民にプロジェクトの概要を伝える情報館の存在がよい。続いて、Path with Artというホームレスらの大人を対象にしたアート教育のプログラムを運営する団体を訪問する。アートを通じて、社会に貢献しようというミッションを遂行しており、シンポジウムのテーマと関係ある運動だ。夕方、ワシントン大学のヘンリーアートギャラリーへ。基調講演をする予定の北川フラムが、砂川の米軍基地に反対する運動に参加した過去の逮捕歴を理由に、アメリカ入国が許可されず、まさかの本人不在となった。ビデオメッセージの後、企画者のジャスティンが代わって、越後妻有の芸術祭を紹介する。
写真:左=上から、シアトル美術館、同上、水辺の再開発計画、同上 右=上から、Path with Art、ヘンリーアートギャラリー、同上
2015/11/12(木)(五十嵐太郎)