artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
中村拓志/NAP建築設計事務所《狭山湖畔霊園管理休憩棟》
[埼玉県]
竣工:2013年
西武球場前駅から狭山霊園に向かって歩く。入口で出迎える円形の《管理休憩棟》は、中村拓志が指名コンペで選ばれ、手がけたものだ。木を囲むドーナツ状のプランであり、中央から斜めに下りる屋根が、そのまま水面上の庇となって、風景の眺めを巧みにコントロールする。風を可視化する水と光のリフレクションが記憶に残る体験をもたらす。
2015/11/03(火)(五十嵐太郎)
METライブビューイング:ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』
会期:2015/10/31~2015/11/06
METライブビューイングのプログラムで、ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』を映画館で見る。火あぶりにされたジプシーの老女の呪い/復讐ゆえか、女性をめぐって引き起される兄弟殺しの悲劇である。闘病を感じさせないホヴォロストフスキーと、貫禄がついたネトレプコ、主役をつとめる二人の歌手が舞台を引き立てる。切り替わる回転舞台と、階段を伴う高さを生かした空間の演出である。
2015/11/03(火)(五十嵐太郎)
アルファヴィル《カトリック鈴鹿教会》
[三重県]
竣工:2015年
続いて、アルファヴィルが設計したカトリック鈴鹿教会へ。ロードサイドの敷地ゆえに、地上は駐車場とし、その上にピロティ形式で教会を載せる。分節された三角屋根が、甲殻類のように連続するシルエットが忘れがたい。屋根の段差に設けられたさまざまなハイサイドライトから光を導き、その下にシンボリックな空間から機能的な部屋まで、さまざまな場を配する。現在、鈴鹿では、信徒が多国籍化しているという。
2015/11/02(月)(五十嵐太郎)
芦澤竜一《セトレ マリーナびわ湖》
[滋賀県]
竣工:2013年
芦澤竜一が設計した《セトレ マリーナびわ湖》を訪れた。水辺に位置し、生態系の一部として建築をつくるが、街から外れた自然の風景のなかにあるわけではなく、周囲にはホテルや商業施設がある。コンクリートの斜柱、折面のスラブ、左官の技術を組み合わせたユニークかつ力強い造形だ。山の風景と呼応する屋上の小山群も印象的である。また結婚式のためのチャペルでは、空間全体を楽器に変えており、エオリアンハープの仕組みによって、風の流れを可聴化する試みが興味深い。
写真:上=《セトレマリーナびわ湖》、下=チャペル
2015/11/02(月)(五十嵐太郎)
竹中工務店《やわらぎ 森のスタジアム》
[愛知県]
竣工:2013年
愛知へ。竹中工務店が手がけた《やわらぎ 森のスタジアム》を見学する。企業の運動場に新設された山中のドームだ。造成地を削りながら、観客席とアリーナの空間を生み出し、その上に高さを抑えつつ、雨水処理を考慮した膜のジグザグ屋根を架ける。今年は新国立競技場問題でさんざんモメたので、片側は完全に開き、自然の風景が視界に入るこの建築は、余計さわやかなドームだと感じられる。
2015/11/02(月)(五十嵐太郎)