artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
Don’t Follow the Wind: Non-Visitor Center
会期:2015/09/19~2015/11/03
ワタリウム美術館[東京都]
福島の帰還困難地域で開催されている、放射線の影響ゆえに、現在立入できない(しかし、将来は訪れることができるかもしれない)展覧会のノンビジターセンターが、美術館の内部に出現する。現物がない、そして現地に行くことができない、不可能性を問いかける作品の数々と展示の手法だ。特に3階のエレベータが開く瞬間が、衝撃的である。ドアが壁で塞がれているからだ。もっとも、会場に現物がないのは、建築展も同じである。
2015/10/09(金)(五十嵐太郎)
ロベール・ルパージュ作・演出「Needles and Opium 針とアヘン──マイルス・デイヴィスとジャン・コクトーの幻影」
会期:2015/10/09~2015/10/12
世田谷パブリックシアター[東京都]
ギミックたっぷりの作品だ。すなわち、プロジェクション・マッピング×さまざまに開口が仕掛けられた回転するキューブの空間×重力に抗う俳優の動きによって、観客を驚かせる。会期中に建造物が回転することで、機能を変えていく、OMAのトランスフォーマーを思い出した。ただし、マイルス・デイヴィスとジャン・コクトーを交差させる物語は、思ったほどの説得力を感じなかった。
2015/10/09(金)(五十嵐太郎)
バットシェバ舞踊団「DECADANCE─デカダンス」
会期:2015/10/04
神奈川県民ホール[神奈川県]
ダンサーが円形に並んで座るシーンから始まる「マイナス16」を冒頭にもってきた後、いろいろなレパートリーをつなぐ。昨年末にスペイン国立ダンスカンパニーもやっていたが、「マイナス16」は観客を巻き込みながら、盛り上げていく鉄板の演目である。多くの観客を壇上に上げるシーンでは、見知らぬ相手でも即座にアドリブ的に対応できる個々のダンサーの能力に感心させられる。
2015/10/04(日)(五十嵐太郎)
「室内」
会期:2015/10/02~2015/10/04
KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]
クロード・レジ演出×メーテルリンク原作×SPAC制作「室内」を見る。中世のノートルダムダム楽派のように、とてつもなく長く引きのばされた時間と所作によって異空間に誘われる。そして役者は感情を殺した言葉をささやく。家族の室内と不幸を伝える男たちがいる庭は、間仕切りではなく、光と闇によって分断される。終始、見えないガラスが分断線上に存在するような不思議な空間体験だった。
2015/10/04(日)(五十嵐太郎)
イキウメ館カタルシツ「語る室」
会期:2015/09/19~2015/10/04
東京芸術劇場 シアターイースト[東京都]
園児とバスの運転手が神隠しにあった事件から5年目の田舎町で起きる奇蹟の物語だ。もっとも、登場人物たちはすれ違いが続き、それに気付かない。外から見ている観客のみが理解するという仕掛けである。それゆえに、劇的なクライマックスを迎えることはないが、彼らが変わってしまった後の世界の新しい日常生活を受け入れる前向きさが光る。イキウメの「聖地X」と同様、物語のひねりとして、SF的な要素を組み込んでいるが、いつもの作品よりも、笑いの要素は控えめだ。
2015/10/02(金)(五十嵐太郎)